吉本真央 ⑦
「ん……」
蛍光灯の白い光が眩しい。
視線を巡らすと窓が5センチほど開いていて、生成り色のカーテンが揺れている。
「どこよ、ここ……」
どうやら私は仰向けになっているらしい。
上半身を起こそうとすると、背中が酷く痛んだ。
ここは…病院?
「あら、よかった…やっとお目覚めになりましたか、吉本さん。
一週間も意識を失ったままだったので心配しましたよ。」
薄桃の制服を着た女性が引き戸を開けて入ってくる。
何やら液体の入ったラベル付きのビニール袋と、洗面器を両手に持っている。
私の左腕から伸びた管の先に新しいビニール袋をつける。
ラベルには、『夏井彩美』と書かれてある。
空の点滴袋をサイドボードに置くと、彼女は洗面器からタオルを取り出し水に漬けて絞った。
「息はしているけどずっと目を覚まさないから、もうダメかもしれないと思ってたんです。まだお若いのに…って。
だけど本当によかった。
もう自転車で無理な運転をしてはいけませんよ。
あ、私莉乃といいます。
夏井さん担当なのでよろしくお願いしますね。」
おしゃべりな看護師は絞ったタオルで私の体を拭いている。
もう何日もそうしてくれていたようだ。
片付けをする彼女を観察する。
白い頬に浮いたそばかすに、明るい茶色のショートカットが似合う。
話していると八重歯がちらちらと見える。
「また後でお昼持って来ますね。
何かあったらナースコールで呼んでください。」
両手が塞がった看護師は、肩で引き戸を開けて退室した。
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