吉本真央 ⑥

意気揚々と坂を下る。

漕がずとも独りでに廻る車輪。

思わず笑みが零れた。

佐野くんの家は海の近くのアパート。

遠くに白波が見えてきた。

私は軽くブレーキを握る。が、効かない。

落ちないスピードに全身から冷や汗が吹き出す。

────やばい、ぶつかる!

翼の溶けたイカロスの気分はこんな感じだったのか。

走馬灯すら見えない速さで、私はアパートの壁に突っ込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る