吉本真央 ②

「これって佐野くん、だよね」


予鈴を聞き、慌ててスマホを鞄にしまう。

彩美がこちらにピースサインを出すのが見えた。


「授業を始めます。佐野くんは…今日も休みですか。」


出席簿をつける先生に見つからないよう、スマートフォンを取り出し先程の投稿にいそいそとブックマークをつける。

たまたま流れてきた投稿。

それは内容も文の書き方も、佐野くん本人だとしか思えないものだった。


「『部長、チャットだるすぎ 朝から部活の話したくないんだけど😛』何これ、悪口じゃん。」


「やっぱりこれ、そうだよね…」


「真央、脈ナシだよ」


「そういうことじゃないの。はあ…本人に直接言った方がいいのかな。」


お弁当を広げながらふたりで画面を覗き込む。

私のたこさんウィンナーを勝手に頬張りながら、彩美は言う。


「とりあえず泳がせとけば?動きがあればまたウチらも考えよ?」


私は彩美の提案に従うことにした。

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