吉本真央 ①

「…返信来てない。」


最初の授業終了後、すぐチャットと睨めっこする。


「ちょっと真央〜、まだ佐野とチャットしてたの?」


友達の彩美が画面を覗き込む。


「返信来てないじゃん。」


「い、いいでしょ別に。佐野くん、もう部活来ないのかな…」


「学校すら来てないのに部活来るわけないじゃ〜ん」


彩美が私の筆箱の中身を漁りながら言う。


「佐野良樹か〜。てか真央、佐野の家知ってるんでしょ?行ってみれば?」


「えっ、無理無理。無理だよ…」


急激に耳の辺りが脈打つ。


「そんなだから進展しないんだよ?

あたし、真央が佐野を好きだってこと、知ってるんだからねっ。

じゃああたし次の授業の用意するから、また後でね〜」


「うん、後でね。」


私は佐野くんのことを好きなわけではないけれど、彼が来なければ合唱部のコンクールのエントリーが済まないのだ。


「チャットが駄目なら、家に直接行ってみるのも手かも。」


胸に残る霧を晴らせないまま、SNSを開く。


「え、これって…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る