第104話 勇者一行、取り敢えず登山
帝国での武道祭への剣士の出場。
何はともあれ、まずは会場である蛮族の住む地に辿り着かなければいけない為、
準備を整えて険しい山脈の攻略へと乗り出そうと思った訳だが…
「協議の結果、魔法使い。 お主を登山メンバーから追放する!」
「そ、そんな…私の何がいけなかったのですの!?」
暗黒騎士の発言に衝撃を受ける魔法使い。
あと追放は何となく言ってみたかっただけ。
「うん、体力。 あと登山に向かなすぎる戦闘スタイル。」
「納得ですわ」
ただでさえ運動音痴な上に魔法使う度に素肌露出する少女を極寒の雪山に連れて行く訳にもいかないので今回はお留守番が決定した。
仕方ないね!
「山脈攻略メンバーは勇者、剣士、魔族娘と我。
あと、何故か俄然やる気の魔女が今回は魔術支援に着いてくれる」
「そういう訳で、お店の方は私の代わりによろしくね?」
「仕方ないですわね…では、現地に着きましたらご連絡くださいましの」
今回は自分の無力さを理解している為、素直に引き下がり、
魔女の代わりに店番の為に一足早く故郷の村へと転移する魔法使い。
魔法使いを送り届けて戻ってきた暗黒騎士に勇者が声をかける。
「おじさま、雪山を登る上での心構えとかあるの?」
漁村育ちで、山登りは近所の小山くらいしか登った事がない勇者に対して、これでも武者修行の為に何度も登山経験のある暗黒騎士は真剣な表情で、
「そうだな…キンキンに冷えた鎧は寒いというより肌に痛い!」
「成程、そりゃ大変だ!」
「脱ぐな脱ぐな!」
慌ててブレストアーマーを脱ごうとする勇者の頭を小突きつつ、剣士が毛皮のコートを勇者に押し付ける。
「師匠も師匠の基準で考えないで下さいよ…師匠の基準って基本どうでもいい事しか対処してないんですから…」
「えっ!?」
剣士の割とガチの苦言に暗黒騎士もショックを受ける。
「えっ、我の基準って…割とアレなの…?」
「えぇ、ガバガバよ。 基本スペック高すぎるから細かい所見えてないのよね」
長い付き合いの魔女に振り返って意見を求めると彼女は真剣な表情で返す。
登山前からメンタルに多大なダメージを受ける。
「いいか、先ずはしっかりと足元を見ろ?
一見、雪っぽく見えるのも凍っててガチガチに滑りやすくなってたりする。
足滑らして奈落の底なんて笑えない状況も起きるのが雪山だ」
「ほぅほぅ…」
こちらも武者修行中に何度か登山もした剣士が勇者に登山の際に気を付けるべき事などを伝授していく。
「みなさい、あれがマジもんのアドバイスよ。
あなたのは近所の悪ガキが体験したアホな経験レベルの話よ」
魔族娘からも追撃を受けて、更にメンタルにダメージを追う暗黒騎士。
こんな時に周りを止めてくれる
早速、PT追放の因果応報を味わう事になった暗黒騎士、言ってみたかっただけの結果は割とすぐに訪れるのだった。
そんな下らないやり取りはさておき。準備を終えた勇者達が山脈攻略を始める。
道中は他の冒険者の姿が見えたが、中腹に差し掛かる頃には殆どが険しい山道への挫折、襲い来る凶悪な魔獣、他のライバルによる騙まし討ち等でその姿を消し、
その中には勇者に最初に話していた髭面の戦士も含まれており、
勇者も「あのおっちゃん、駄目だったか~」と少し残念そうにしていた。
しかし、この先で待っているのはこれらの艱難辛苦を乗り越えた者達による激闘である為、ここで脱落するのはある意味幸せなのかもしれない。
暗黒騎士達ですら大自然の猛威に苦しめられた末に見えてきた蛮族達の集落。
其処には、
『おいでませ、マジ★デス・ラブリィ帝国建国予定地へ』
と書かれたのぼりが建ち、
集落の入り口では多種多様な亜人の女性達がこちらへ向かって、
「いらっしゃいませ~、武道祭へ参加希望の方でいらっしゃいますね~。
先にご登録の方をお願いいたします~」
と、案内場まで誘導してくれた。
「こう…アレだな…」
「アレっすね…」
「「蛮族ってこうじゃないだろ!?」」
暗黒騎士と剣士の心からのツッコミに
案内してくれていた亜人の女性が何か間違ったのかと戸惑うのだった。
勇者歴16年(春):勇者一行、蛮族の集落に辿り着く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます