第67話 魔族娘、豊穣祭に向けて特訓する
魔族娘の抱えていた悩み。
『父親の敵討ちに臨む自分がその人生を楽しんでいいのか?』という問題は
かつての死霊王、今ではマジカル★デスウィッチだが…によって、
「それはそれ、これはこれ」という見事なまでの棚上げによって一応は解消された。
吹っ切れた魔族娘はマジカル★デスウィッチに相談し、「深夜のお茶会」団員と一緒に舞踊の練習を始めている。
元々身体能力に長けているのと、竜王との格闘訓練が功を奏しているのか彼女の舞踊技術はメキメキと上達していっている。
「あれで良いのか? お主も豊穣祭の頂点を目指しているのであろう?」
暗黒騎士はそんな特訓風景を眺めながら、隣で休憩している元同僚の現旅芸人に疑問を尋ねる。
「フッフ~ン! この程度の事は問題ないわ! ライバルとは対等なレベルで挑みたいもの! それに私は歌って踊れる歌姫だしね!」
「うぉ…貴様も吹っ切れ過ぎだろう…」
暗黒騎士に暴露されてから暫くは死霊王モードだったマジカル★デスウィッチも、現在では元の面影なぞ微塵もないほどになれはて…もとい、達観してキャラを取り戻している。
その度に暗黒騎士は鳥肌が立っているのだが。
「というか、そもそもお主、男じゃなかったのか?」
最初から抱いていた疑念、こいつ性転換したのか問題を今更取り上げる暗黒騎士。
「あ~~~、やっぱり勘違いしてるぅ~! 私は元々性別なんてないですぅ!
死霊の王を名乗ってますけど、私は闇からの派生だから無性ですぅ~」
「えぇ…では、何故男口調だったのだ」
「キャラ立て」
「…ハイ」
聞かなきゃよかったと心底後悔する暗黒騎士。
割と属性被ってたし、結構好感あったんだけどなと
今は夢幻と消えたかつての同僚を思う。
「ところで、そっちは他の子も参加するんでしょ?」
「うむ、その通りだが、一人は適当に剣舞だけやってさっさと終わらせると言っていたな」
ほうほうと手帳に書き記していくマジカル★デスウィッチ。
「他の子は?」
「敵状視察か…? だが、残念ながら我も知らん」
「チッ、使えねぇ…」
「本当に遠慮なくなったな、お主!?」
横で舌打ちをする元同僚のなれはてに暗黒騎士が翻弄されていると、
魔族娘が休憩しにこちらへと歩いてくる。
全身から玉のような汗をかいているが、その表情は清々しそうだ。
「ふぅ…騎士、ちょっと飲むものちょうだい」
「ムッ、あぁこれでいいか?」
「ありがと」
父親の件もあってか、暗黒騎士とは若干の壁を作っていた魔族娘だが、ここ最近は自分から打ち解けてきている。
暗黒騎士が投げ渡した水筒を受け取り、それを一気に流し込んでいく。
「ぷはぁ! これがお酒じゃないのが残念ね!」
見た目年齢15歳程度の少女の言う台詞じゃない言葉を吐きつつ、
魔族娘は疲労からかその場に座りこむ。。
そうするとマジカル★デスウィッチが彼女の傍に座り直し話しかけていく。
「演目は決まったの?」
「まぁ、概ねは…でも、ちょっと演出不足な気がする」
「ふぅん? それって、自分だけで解決出来そう?」
「どうだろ…単純に花が足りない気がする」
そんな風に話し合う見た目少女二人に暗黒騎士はあり得ないほどのガチっぷりを感じて圧倒される。
ちょっと普段と本気度が違う気がしてツッコむにツッコめれない。
「あぁ、そうだ。思いついた!」
マジカル★デスウィッチと話し込んでいた魔族娘が暗黒騎士に顔を向ける。
「ちょっと騎士から勇者に伝えてほしいんだけど」
「フム、聞こうか?」
真剣な表情の魔族娘の態度に、暗黒騎士も真面目に耳を傾ける。
「成程な、先約がなければ問題ないだろう。
あの娘にはこちらから確認しておこう」
内容を聞いた暗黒騎士が頷き、その場から立ち上がる。
「さて、アタシももう少しステップの確認するか!」
「こっちも負けてられないわね、そろそろ戻るわ」
お互いに手を振り合い、持ち場に戻る二人を眺めつつ、暗黒騎士も先程の話を勇者に伝える為に彼女の元へと向かう。
「アレでどちらも見た目詐欺なのがな…」
去り際、つい本音が口をついてしまった暗黒騎士だった。
勇さy歴15年(秋);勇者一行、豊穣祭に向けて最終調整に入る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます