第63話 勇者、聖都を目指す
魔法使いの念願も果たし、王都に滞在する理由も無くなった為、当座の目標である聖都へ向かう事を決意し、聖都の情報を集めていく。
そうして集めた情報をわんにゃんカフェにてお互いに共有していた。
「豊穣祭?」
「あぁ、聖都で年に1回ある女神へ田畑の収穫を感謝して開かれるお祭りだ。
今は封鎖中の聖都もこの日だけは特別に解放されるらしい」
冒険者達から話を聞いていた剣士が勇者に集めた情報を整理して伝えていく。
「しかも、この日だけは聖女も豊穣祭の功労者に直接面談してくれるそうだ」
「功労者って何の?」
「ん? …あ~、それな」
剣士は困ったように頭を掻きつつ、その先を説明する。
「広場にて演目は自由だが、一番参列者を盛り上げる事が出来た者だな」
「それってつまり?」
剣士の言葉に勇者の目が輝いている。
「まぁ、見世物がすげぇ沢山開かれるって事だ」
「おぉー!!」
見世物という言葉に更に勇者は目を輝かせている。
こういう時の勇者は大体悪い方向に暴走するので剣士はこの時点で嫌な予感を覚えていた。
「出よう、私達も!」
「あぁ~、やっぱそう来るかぁ…」
興奮気味に立ち上がり、両手を振り上げて宣言する勇者に剣士は眩暈を覚える。
「出るっつったって、俺はそもそも剣舞くらいしか出来ねぇし、
確実に盛り上がんねーぞ?」
「んっふっふっ! 我に秘策有りだよ!」
鼻息を荒くしている勇者。
「いやぁ、多分愚策だと思うぞ」
「んも~、先ずは話聞いてよ兄弟子!」
「ヘイヘイ…」
もう明らかに駄目な方の流れなので諦めつつ、コボルトコーギーが差し入れしてくれたお茶を飲む剣士。
「という訳で女神様どうぞ!」
「女神様ではない。女神演出統括責任者、略して女神Pと呼びなさい」
勇者に呼ばれた女神が色付き眼鏡をかけ、肩にジャケットを羽織りながら現れる。
「あ、終わった」
この時点で完全に詰んだ事を察する剣士。
「幸いにも豊穣祭まではあと1か月半ほど猶予があります。
その間に聖都へと向かいつつ、
貴方達にはそれぞれとっておきの芸を磨いて貰います!」
「芸ですの?」 キョトンとする魔法使い。
「だから出来ねぇって言ってんじゃん…」 呆れる剣士。
「……」 何か考えて押し黙る魔族娘。
「ウフフフフ…私はもう考えてるもんね」 何かを企てる勇者。
「フッ、安心しなさい、貴女方にはこの豊穣祭を最初から見守ってきた私がついています。傾向と対策はばっちりですよ!」
「それはお主がそもそも(崇められるてきな意味で)主役なのだから、
見てきて当然であろう…」
自信満々な様子の女神に対して、暗黒騎士は何言ってんだという目で眺めている。
こうして、聖都へと向かう道すがらそれぞれが何かの芸を磨く事となった。
勇者歴15年(秋):勇者一行、豊穣祭への参加を決める。
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