第58話 勇者、王都へ凱旋する

ずらっと一列に並んだ子型獣人達、ファンシー小隊はすっかり勇者に懐柔されて彼女に敬礼している。


「われら、ふぁんしーしょうたいは、こんご、ぼすにちゅうせいをちかいます!」


リーダー格のコボルトコーギーが魔法使いに撫で繰り回されながらキリっとした表情で勇者へ宣誓する。


「うむ、良き哉良き哉。じゃあ、皆はひとまず一旦一緒に来てもらおうかな?」

「いえす、ぼす!」


ファンシー小隊が勇者に同行する事となった為、砦奪還に来てそのまま居ついていた犬猫派の冒険者達も名残惜しそうにしつつも帰り支度を始めている。

本当に辛そうなのは元々砦を守護していた兵士達で「あぁ…俺達の癒しが…」等と瞳を潤ませながらチビ獣人達を見送っている。

なお、全員ガチムチ。


「あの人らに聞いたけど、ボロボロになって逃げかえってきた冒険者ってのも、このチビ共を強引に倒そうとしたからみんなでボコボコにしたらしいわ」


呆れた様子で頭を搔きながらも剣士が事の真相を確かめてくる。


「まぁ、ファンシー小隊は凄く弱いからな。 頑張り屋さんではあるが」

「頭沸いてんのか魔族、いやここの連中も大概ですが」


暗黒騎士も真相にしきりに頷いており、女神も流石に今回は人族の味方なのをちょっと後悔している。


「まぁ、何にせよこれで一件落着! 王都の城門開けてもらおう!

 妹ちゃんもまーちゃんもそろそろいくよ~?」


それぞれ至福の表情でファンシー小隊に構っていた魔法使いと魔族娘を正気に戻しつつ、勇者は王都へと戻る事にした。

(モフモフの誘惑に)囚われていた冒険者達が勇者一行が砦を開放した事を城門の守護兵に伝え、守護兵も実際に勇者に同行しているモフモフ達を見ればキュンとしつつも急いで城内へと伝令を走らせた。


暫くして重苦しい音を響かせながら城門が開き、行列を作っていた人々はやっとかと胸を撫で下ろしながら勇者一行に感謝の念を伝えながら王都へと入っていく。


「うん、みんながニコニコしてるのは気分がいいね、おじさま!」


そんな人からの感謝の言葉を浴びる勇者は今までにない経験に顔を綻ばせており、


「あぁ、お主の父も今の姿を見れば喜ぶであろうな」


そんな風に笑顔を見せる勇者の姿に亡き友への思いを馳せる暗黒騎士。


「「うへへへへへへへへへ」」


そして、そんな二人の背後の馬車の中ですし詰め状態のモフモフに挟まれてトリップしている魔法使いと魔族娘だった。

ちなみに剣士と女神は狭いので降りました。


「あぁ、砦を奪還して頂けた冒険者とは皆様の事でよろしいですか!?」


そんな一行にあくせく息を切らせながら走り寄る兵士の姿。


「ん? まぁ、そうだけど。 何か用ですか?」


丁度馬車から降りていた剣士が兵士に答える。

どちらにせよトリップ中の2名と、基本命令以外する気のない女神は端から使い物にならないのでこの手の対応は彼の役目でもある。


「えぇ、国王が今回の件で褒賞を与えたいとの事なのでご案内致します!」


こうして、勇者一行が自国での初の謁見を迎えるのだった。


勇者歴15年(春):勇者、国王と謁見する。

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