勇者の旅立ち(保護者同伴)、聖都解放編

第51話 女神のお告げと真実

「ハウァッ! ゆ、夢…?」

「お、目覚めたか」


あの後、あまりのショックから気絶した女神をベッドに寝かせ、目覚めるまで一時解散となった。

勇者は以前から計画していたらしい暗黒騎士とお揃いの魔剣生成が、都合のいい素材をタダで貰えた為、これ幸いとあの明らかに邪教な儀式を敢行したらしい。

魔女が「何かの冗談だと思ってた…」と身に覚えがあったらしいが、有り余る彼女の行動力と謎のダークヒーロー願望の事を見落としていたらしい。

勇者といえば御満悦で魔剣を振り回し、海を割ったりしていた。子供って怖い。

なお、近所迷惑なので夫人に窘められた後は普通に就寝。そういう問題なのか?


結局、女神が目を覚ますまでは暗黒騎士が見張る事にして冒頭に至る。


「あ、貴方は魔族!? 何故此処に!?」

「いや、来たのはお主の方だからな?」

「え、あれ? 私の聖域じゃない? え、えっ?」


周囲を見回して徐々に昨日の記憶を取り戻していく女神。

記憶を取り戻す程に分かりやすく青白くなるので、見てる方としても説明が省けるのは楽でいい。


「……夢じゃないのかよ」


両手で顔を抑えて嘆く女神。 気持ちは分からないでもない。


「貴方が勇者を唆したのでしょう! 勇者を闇に誘うとは卑怯な!」

「いや、誘うというか…自ら飛び込んできてるのだが…ハッ!?」


あぁ、そんな窓に! 窓に勇者が! ヤっちゃう?っていう目で見てる勇者が!


「ステイ! 駄目だぞ! まだ話全部聞いてないからステイ!」


暗黒騎士の制止にちぇ~って顔しながら移動していく勇者。


「え、聞かれてました!? 居たの? 本当に!?」


暗黒騎士の様子に察してビクビクしながら後ろを振り向く女神、

つくづく背後に弱い。


「と、とにかく!! 改めて話があるので皆を集めてください!」


窓にもう勇者の姿がないことに安堵しつつ、女神が上から目線で指示を出してくる。


「それはいいが、まずその寝癖を直せ」


女神が威勢を取り戻したのを確認し、さっきから爆発している髪を指摘して暗黒騎士は部屋を出ていく。 直後、「え、何で女神なのに寝癖!?」という奇声が聞こえたが、こっちが知りたいわそんな事は。


「とひゅうわけふぇふぇ(というわけで)ですね、ひゅうしゃ(勇者)でありゅ(ある)あふぁふぁ(あなた)には、まふぉう(まおう)ふぉうばつ(とうばつ)のふぃめい(しめい)があふぅのふぇふぇよ(あるのですよ)」

「物を口に入れながら喋るな、飲み込んでから喋れ。はしたないぞ」


朝食までしっかりご厄介になっている女神の行儀の悪さに若干苛々しつつ、話を聞いていく。


「要はこの娘は貴様に選ばれたという事で良いのだな?」

「ムゥ、魔族は偉そうですね。まぁ、その通りですけど。あ、お替りください!」

「あ、ママさん、私もお替り!」

「ハイハイ」


同時にお椀を差し出す来客と扶養家族魔族娘

夫人もそれをにこやかに受け取っている。


「いや、少しは遠慮しろよお主ら…」


完全に我が物顔になっている女神に呆れる暗黒騎士。

一方の夫人は大概慣れたもので、この手の扱いもこなれている。


「ふぅ…お茶が美味い…」

「いや、和むな。お告げとやらが終わったならさっさと帰れ」


朝食をやたらと食った女神がお茶で一息ついている。

それを鬱陶しそうに手で払う暗黒騎士。


「え、帰れませんよ? あの装備に信仰心注ぎ込んじゃったので聖域崩壊しちゃいましたし」

「ん?」


今、こいつは何て言ったんだ?とその場にいた暗黒騎士達は首を傾げる。


「という訳で、私も勇者の旅に同行します! 崇め奉って敬ってください!」

「いや、お前単に家がないだけだろ!?」


こうして、女神(無一文)が仲間に加わった。


勇者歴15年(春):女神が勇者の加護に着く(物は言いよう)。

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