第50話 新魔王軍侵略会議

円卓の席に新魔王を筆頭に新四天王の面々が揃う。

今の侵攻具合に関してそれぞれが報告を上げる為だ。


「まず、魔界と人界の境界線には人族の連中の連合軍が防衛線を張っている。

 今の所は一進一退といった所だが、こちらの被害は想定の範囲だ」


前線総指揮官である火の火蜥蜴が現在の戦況を語る。


「補給線については、矢張り竜王殿は関わらないという事だ。

 あの飛竜隊が味方してくれればもう少し侵略も早まるのだがな」

「無いもの強請りをしても仕方ないでしょう。 彼の性格は把握しています。

 無理強いすれば不興を招くだけなので放置で」


円卓に広げられた地図に置かれた戦況を簡略化した模型を眺めながら新魔王も火蜥蜴に対して頷き返す。


「空路にて少数の部隊が人界へと潜入できておりますが、如何せん輸送の都合上、戦力としてはまだ不安が残りますわ。 どういたします魔王様?」


魔王軍空挺部隊指揮官である風のハーピィが尋ねる。


「フム、今の時点ではまだ情報かく乱と物資の奪取もしくは破壊に勤めてください。

 敵の戦力がそちらに向けば前線も乱れやすくなります。

 あぁ、敵がそちらを向いても迎撃はしなくて結構です、あくまで陽動という事で」

「畏まりましたわ!」


各自の駒を配置し、戦況を俯瞰する。概ね想定通りだ。


「お父様、私からも」

「公の場では魔王と呼びなさい」

「も、申し訳ありません、お…魔王様。 人族の海域へは大型の魔物を配置し、商船を襲わせております。お陰で徐々にではありますが海上での人族の活動が減ってきておりますわ」


娘である精霊姫を窘めつつ、その報告を受ける。

未だ親への甘えが抜けない様子はあるが、実力は十分にある娘だ。

新魔王の縁故だけで幹部に収まっていると影では誹られている事を本人も知りつつも、自ら成果を上げる事で徐々にその評価も覆ってきている。


「私からはとっておきの報告がございます」

「ほう、不死王。それで下らない話だったらば容赦しませんよ?」


新魔王の冷たい目に対して、暗部諜報を指揮する土の不死王は不敵な笑みを漏らす。


「聖都の聖女の無力化に成功しました」

「な、なんですって!?」


その言葉に新魔王も思わず立ち上がる。他の3人の四天王も驚愕の色を隠せない。

聖女といえば、様々な強力な聖魔法を自在に操り、大教会の最大戦力として保有されていた存在の筈。


「しかし、聖女は毒も呪いも通じないと聞いていました、それを一体どうやって」


女神の加護でそういった悪意に対しては無類の耐性を誇っていた筈、それを無力化した方法とはいったい何なのか。


「ククク……いや、何故か魅了チャームがあっさり通りました。

 むしろ特攻入りました、何でしょうねアレ…」

「エェ…」


言ってる本人が一番困惑気味に報告する不死王。

その日、新魔王軍内で聖女の認識が変わった瞬間だった。


勇者歴14年(冬):魔王軍、着々と侵略を進める。

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