第45話 新魔王、動く
「これ、もう警戒しても意味ないのではないか?」
定期軍議の中で、新魔王も流石に今の無意味さに辟易していた。
魔王ナンカオル捜査網も最近は大分おざなりで報告書には書く事がなさすぎるのか、昨日の夕飯とか書いてくる奴まで出る始末。日誌じゃねぇんだよ。
魔界の中でも「新魔王は慎重派過ぎてツマラン。その点、前の魔王は良かった」等と自分とあのバリピ脳な旧魔王と比較するものまで現れる始末。
基本脳筋の魔族内で勝手に自己の評価が下がっていく事も腹立たしい。
「こちらは先の事まで見据えて動いているのですよ!」
そんな風に自分を鼓舞しようと、世俗の腰抜け魔王という評価が覆るのも難しい。
ならば、もうこちらから動くしかないのが現状なのである。
なので、彼は軍議の中で居並ぶかつての旧四天王と違って身勝手な事はしない今の幹部を見据えて口を開く。
「ナンカオルが動く気配のない現状、最早待ちの姿勢は止めましょう」
新魔王の言葉に幹部達の目の色が変わる。
遂に待ちに待っていた時が来たのだと。
流石に4年間ひたすらデスクワークする羽目になるとは思ってなかった。
「フッ、その言葉を待っていた!」 本当に待っていた火の
「遂に人界侵略の時ですのね」 4年間の間で推しの歌姫が移籍した風のハーピィ
「自然を荒らす人共に鉄槌を下せるのですね!」 親の縁故就職の水の精霊姫
「ならば、一番手は私が戴きたく」 前任の所為で肩身の狭かった土の不死王
新魔王に着き従う四天王もそれぞれに動き始めようとする。
なお、将軍の座は縁起が悪くて不吉という事で永久欠番である。
「あぁ、これより人界侵略を開始する!」
新魔王の宣言は即座に魔界中に触れ回られ、「今更」という微妙な反応で魔族達の間で迎え入れられていた。
勇者歴14年(秋):新魔王軍が人界侵略に動き出す。
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