第40話 女神、再起を賭けた一手

女神の失態による魔王ナンカオル騒動。

人々の信仰心を原動力とする女神はこれにより、新魔王軍による侵略を一時的に遅らせた代わりに人界に不安を招いた。

人々は救済を願い熱心に祈る者もいれば、信仰を放棄して自分だけは助かろうと悪徳の道に染まる者も生み出してしまい、結果的に正負で言うと負に若干傾く状況に自ら陥ってしまった。

逆転の一手は自分が指名した勇者による魔王討伐を成功させる事しかない。

だが、そこは無駄に虚栄心が強いこの女神である、前回の反省が全く活きていない。


「この前の時点で宣伝はもう終わってるし、必要なのは神の装備よね!」


定番といえば定番の神聖なる神の武具の作成に着手しだす女神。

そういうのはもっと事前に作りましょう、夏休み終了前の宿題のノリである。


神の装備は人々の信仰から生み出される奇跡の武具。

それはつまり、


「ハイ、じゃあまずは10連行ってみましょう」


信仰力を基にした錬金(ガチャ)である。


「ちょっと!? なんで10連して上級武器1個しか出ないのよ!?

 確率的にはもうちょっと出てもいい筈でしょ!?」


天井なし2%の仕様上の闇に手を出してしまう。


「少なくとも勇者にあげるなら特級じゃないと駄目よね…

 上級はなんか強そうな奴を倒したら落ちる様に付与しといて、

 下級は適当に迷宮にでも捨てましょうか」


そう言って、産まれた装備を適当にポイ捨てしていく女神。


「今月は信仰力に余裕あるし、もう10連くらいやってもいいでしょ…」


明らかに駄目な思考に走り出す女神、その先は沼です。


「がぁぁぁっ! どうして炎の剣(そこそこ強いけど下級の武器)が3個もダブるのよ!! 運営仕事しろ!」


運営はお前だ。


この日以降、迷宮でやたらとそこそこの良い武具が良く落ちるようになり、迷宮探索を糧にする冒険者の中では一時的に武具バブルが訪れていた。

なお、一般的な人族には全くもって恩恵が無かった為、これまた正負で言えば更に負に傾いたのは言うまでもない。


勇者歴14年:女神、沼る。

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