第11話 暗黒騎士と世情

「野盗で…あるか?」

「へぇ、村の外だと飢饉やらで仕事にあぶれた者もおりますでぇ」


その日の暗黒騎士はこの村の村長(というより単に一番のご長寿)の家で話を聞いていた。 この村に厄介になってから、鍛錬がてら近辺の魔物駆除や村の用心棒的役割も担っていたのである。


描写されてなかっただけで決して、ただの家政夫ではないのである。


人界では長らく魔界からの魔族の侵攻もなく、大規模な種族間での戦争こそなかったものの平穏な時というものは得てして無駄な野心を招く。

そうして、人界でも各国が入り乱れて各々の領土を増やそうと小競り合いを繰り返し、治安は乱れていた。

大陸の端であり、半端な統治より自治任せにしていた方が手間のかからないこの村も一応は小国の領地であるが、半分忘れられているので暗黒騎士が居座っていても気づかれていないのだが、その分、国の庇護も殆どないという事である。


「争い合うは何処も同じか」

「へぇ、そうですねぇ」


茶飲み友達の村長の家を辞した後、後の勇者の家へと戻る途中でいっそ先に殲滅してきてしまおうかとも思ったが、その考えは襲撃者の存在によって阻まれる。


「きしー!」

「おや、出迎えであるか」


足元にへばりつく最近はよく走り回るようになった幼児を抱え上げると、こちらに手を振っている夫人の下へと帰参した。


勇者歴3年(春):暗黒騎士、世知辛い世情を知る。

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