第7話 暗黒騎士、正す
今日も今日とて赤子をあやす夫人を見守る暗黒騎士。
しかし、この日はいつもと違った。
「ほ~ら、ママですよ~」
夫人が赤子に優しく呼びかけながら腕の中で揺すっていると、
「まぅま~」
と、赤子は意味のある言葉を発したのである。
「まぁ、お聞きになりましたか騎士様!」
夫人が明るい表情で暗黒騎士に目を向ければ、暗黒騎士も頷き、
「うむ、しかと聞き届けた。良き声であった」
と、(兜越しで見えぬが)微笑みかける。
「ほら、騎士様も呼んであげましょう。 きしさま~って」
夫人は赤子を暗黒騎士の方に向けて語り掛ける。
暗黒騎士も思わず固唾を飲んで見守り、
「ぱぁぱ」
「ぬわーッ!?」
かいしんのいちげき。
あんこくきしはメンタルに100のダメージ(メンタル上限50)。
「だ、大丈夫ですか騎士様!? どこかで聞いたことのある断末魔のような悲鳴を上げられましたが!?」
思わず駆け寄る夫人を暗黒騎士は手で制する。
「ぬぅ…へ、平気である、面妖な事に芯に響く衝撃を味わったが身体には何も問題ない」
しかし、MPはマイナスだ。
更に夫人が傍に近寄った事が更なる追撃を招く。
「ぱぁぱ」
あかごはあんこくきしにおいうち、しかもかぶとへのタッチつきである。
「グワーーーッ!!」
「騎士様が今にも爆発四散しそうな悲鳴を!?」
片膝をつき、荒い息を漏らす暗黒騎士。このような衝撃は魔界で呪術師を相手にした時ですら受けた事はないが、そもそも呪術でも攻撃でもないので当たり前である。
「くっ、ち、違うぞ、我が同胞のいとし子よ。我は父に非ず、暗黒騎士である」
「騎士様、そのような難しい言葉はこの子には分かりません!」
夫人にも追撃を食らい、両膝を突く。
「最早打つ手なし…」
諦めが早い。
「えっと、ほら、騎士様ですよ、騎士様」
「きぃき」
伝わっているのかいないのか、赤子は夫人の言葉を真似ている。
「我は無力だ…」
一方、暗黒騎士は謎の挫折を味わっていた。
勇者歴1年(秋):暗黒騎士、(ほぼ9割夫人のおかげで)誤解を正す。
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