第6話 暗黒騎士、驚嘆する
「な、何と……」
目の前の光景に暗黒騎士はその兜の奥の目を光らせる。
「おー」
柵の中の赤子が、柵を掴んで足を震わせながら立ち上がろうとしていたのだ。
「ご婦人、ご婦人、此方をご覧じろ!」
暗黒騎士の慌てた声に寝台で休んでいた夫人は目を開けて、声の主に目を向ける。
「まぁ!」
それは都合よく掴まり立ちに成功し、身体を揺らしながらも何処か自慢げな赤子の姿。
「あぅ」
それを二人が目撃してすぐに尻餅をついたが。
「この子も日々成長しているのですよね…それなのに私はいつまでもあの人の事を思い出してクヨクヨと……」
夫人は自らの頬を両手で叩く。
「私がしっかりしないと!」
決意を新たにした目で我が子に慈しみの目を向ける母の姿に暗黒騎士は胸を打たれる。
「ご婦人よ、まだ喪中の身で無理をせずとも我も盟約に従い貴女を助けるが…」
「いえ、それではいつまでも騎士様の優しさに漬け込んで甘えてしまいます。 大丈夫ですから見守ってください」
「むぅ…」
そこまで言われれば素直に引きさがざるをえない。
「(何と強き心の姿か、此れが絶望を知ってなお立ち上がれる人の力か)」
その様に驚嘆する暗黒騎士。
普通そういうのは立場的に好敵手を散々に打ちのめした後の再戦とかで受けるものだというのは無粋である。
勇者歴1年(春):暗黒騎士、勇者が(初めて)立ち上がるのを見届ける。
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