第2話
眩しい。目蓋の裏側が白く照らされている。
気怠い。体の感覚が鈍い。
指先が動く事を確認すると重たい目蓋をゆっくりと開けた。
晴れている訳ではない。
自分の周辺を見回すとそこは白い小部屋の様な空間だった。
「起きたのかい? マスター」
ああ、この声は聞き覚えがある。
一番長い付き合いだった闇の精霊。
「よおシェイド……1000年ぶりか?」
声のした方向を向くもその姿は見つからない。
「マスター、見えてないの?」
「あぁ、そりゃ1000年も寝てたらキツめに寝ぼけもするだろうさ」
「残念だけどまだ500年しか経ってないよ。早起きし過ぎたね」
500年……? 爺は1000年って言ってなかったか?
駄目だ、頭が働かない。
それよりも気になるのは……
「シェイド、何でここに居るんだ? 確かマナと一緒に精霊も解き放った筈なんだが」
「ボクは闇の精霊だからね。所在が決まってないし、役割もさほど多くないからすぐに暇になっちゃったのさ」
闇の精霊と言うのは空間や重力、いわゆる世界を維持する為の楔の役割を担う。
光の精霊を対局として2つの精霊が世界を繋ぎ、地、水、風、火、雷、氷、木のそれぞれの精霊が世界を構成する。
「つまり……シェイドは寂しがりの構ってちゃんで俺が起きるまで待ってたって事だな。ぼっちめ」
「マスターが寂しがると思ったから居てやったのに何さ!」
「俺はもう契約を切ったんだ。マスターって呼ぶのはヤメにしねーか?」
そう、世界の再生の為にマナを解放した俺は今まで共に過ごしてきた精霊とはもはや契約関係に無い。
「じゃあ何て呼んだらいいのさ、もう勇者じゃないしマスターでもないなら名前?」
名前か……こっちの世界に来る前の名前は好きじゃない。
本名は黒乃芭蕉(クロノ バショウ)。
バショウと言う名前は偉人から取った名前で嫌いじゃないのだが、それを古臭いと馬鹿にした奴らと揉め事を起こして両親を泣かせた事があるからだ。
「それよりも世界はどうなってる?マナは無事補填出来たのか?」
「んー……半分って所じゃないかな? あの人元々は世界を再生じゃなくて再誕させるつもりだったみたいだし」
「何が違うんだ? 頭がシャッキリ起きてないから簡単に説明してくれ」
「相変わらずわがままだなぁ。つまりは元あった世界を生まれ変わらせるって事。直すんじゃなくて作り変えてるんだよ」
そう言う事かと納得するにはどうもピンと来ない。
「まぁいいや、自分の目で見て確かめる。シェイドも来るだろ?」
「もちろん行くともさ。暇だしマスターは寂しがりだからね」
「言ってろ。俺がシェイドを見える様になったら覚えとけよ」
こうして俺の3度目の人生が始まった。
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