【第二節】学校一の美女だろうが私のお兄ちゃんを振るとはいい度胸じゃない~義妹とはあくまで偽物の恋人であって本物ではないはずなのだが、妙に色々とリアルなのはなぜ~
第34話 デレモードの白雪VSお怒りモードの育枝
第34話 デレモードの白雪VSお怒りモードの育枝
一人夜空を見上げる白雪。
傍から見れば、窓を開け、そこにあるベランダで一人夜風を全身に浴びて、金色の長い髪をなびかせる美少女。そこに警戒心はなく、細い体はつい後ろから抱きしめてしまいたくなるようなスタイルの持ち主でもある。
実際に中学校三年生の時には多くの男子生徒から注目を受け、告白をされている。それは高校に入学しても変わらずだった。日に日に美しくなる彼女のプロポーションに雑誌からも読者モデルをして欲しいとの依頼も最近では受ける程にだ。
「急にどうしたの?」
少し間を空けて。
「寂しくなったのかしら?」
と白雪が呟いた。
俺は今白雪と横並びでベランダに立っている。
「……そうだな」
俺はベランダから見える夜景を見ながら答える。
ちょっと前まで俺達が最後に遊んでいた砂浜には今は誰もいない。
「こうして私と二人きりって久しぶりね」
「あぁ……」
「やっぱりそっちの方がカッコイイよ、空哲君」
そう言ってさり気なく身体と身体を密着させてくる白雪。
浴衣一枚を通して伝わってくる白雪の温もりがとても心地よく感じる。
その温もりは確かに俺の心の奥深くまで届き、優しく包み込んでくれるように。
「ねぇ……今何を考えているの?」
さり気なくそんな事を聞いてくる白雪。
「本についてかな……」
「やっぱりね。私のことじゃないんだね」
「ごめん……」
「謝らなくていいの。だって私ね本の事を考えている空哲君が一番カッコイイと思ってるし大好きなの。でもたまには私だけの事も考えて欲しいなーって思ってたりもするけどね。うふふ」
そう言って微笑みを向けてくれる白雪は天使のように可愛い。
てかさっきから腕に当たっている弾力のある物がまた触れていて気持ちいい。
浴衣の下には下着を付けていないらしく、その感触が薄い布一枚越しに伝わっているのだ。
試しに視線を向けて見ると、白雪の顔が真っ赤になった。
「ち、ちょっとなにガン見してるのよ……」
俺の目を見て、恥ずかしがりながらも離れようとしない白雪がとても可愛い。
だけどこの状況に少し恥ずかしさを感じた俺が離れようとすると、俺の腕を離さないと言わんばかりに掴んでいる白雪の腕に力が入る。
そして赤面しながら。
「恥ずかしいから、今は夜景でも見てなさい。でもね、エッチな空哲君は嫌い……じゃないわ」
最後はボソボソと俺に聞こえるか聞こえないかの声で呟く白雪。
そのまま俺達はしばらく夜景を見る。
高鳴る心音に反して、外はとても静かで涼しい風が吹いている。
あぁーもう。
真面目な事を考えていたのに白雪の事が気になって集中できない。
だってさぁ、今は人目もないんじゃん。
それに部屋には誰にもいない。そんでもってこれだけ綺麗な女の子が離れようとしない、もう傷付いてボロボロな俺の心をこんなにも癒してくれようとしてくれている女の子ってポイント高すぎるでしょ。
「本当に空哲君って単純ね」
白雪は俺の顔をチラッと見て言う。
そしてクスクスと笑い始める。
「一人早いと思ったら何抜け駆けしてるのよ、白雪七海!」
部屋の扉が開いたかと思いきや、そのまま俺ではなく白雪に対して起こる育枝。
「なにってちょっとイチャイチャしてただけよ?」
「はぁ? そもそも恋人でもなんでもないのよ?」
「別に男と女なのだから、別に不思議なことではないわよ?」
頼むから仲良くしてくれ。
あぁ……嫌な予感するし、ここは逃げようかな……。
「確か少し考えたい事があるって言ってた気がするけど?」
そのまま育枝に続いて部屋に戻って来た琴音が白雪に尋ねる。
その後ろには亜由美と水巻がいる。
「えぇ。でも考え事してたら、空哲君が隣に来てくれたからこれはチャンスかなって?」
「ん……?」
何か違うぞ……。
「そうなの?」
俺の僅かな表情に疑問を覚えたのか琴音の視線が俺に向けられる。
「逆だけどね」
俺はすぐに否定した。
元々俺は一人早く部屋に戻りベランダって夜空を見ながら考え事していた。
その後しばらくして白雪が部屋に戻ってきた。
考え事に夢中になっていた俺はすぐに気づかなかったが、途中物音が聞こえるなと思い、ベランダから部屋に視線を向けるとそこで白雪と目があった。それから白雪の真剣な表情が嘘みたいにぱぁっと明るくなり俺の隣に来たのだ。
「七海?」
「別にいいじゃない。ちょっとぐらい事実関係を着色したってね」
満面の笑みで誤魔化す所か間違いを認める白雪。
この場にいる全員の視線が白雪に向けられる。
そんな視線にビビる所か白雪は落ちついて言う。
「ダメなの?」
「ダメでしょうが! てかいい加減に離れろ!」
そう言って育枝が強引に白雪の腕を掴み、全身の力を使って強引に引き離そうとする。だが白雪も負けじと俺の腕に力を入れて、必死になって抵抗する。それはもう接着剤で身体と身体を引っ付けたかのようにピタリと離れようとはしない。
「うぅぅぅぅぅ、もぎれるぅぅぅぅ!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ。離してぇぇぇぇぇ!!!」
「いい加減離れろぉぉぉぉぉ!!!!!!」
デレモードの白雪VSお怒りモードの育枝。
俺が下手に動かず何も言わない理由でもある。
ここでこの二人の戦いにこれ以上巻き込まれたくないと言う俺の防衛本能がそうさせていた。当然周りの目は哀れな男を見るような視線で色々と察してくれている。だってなんか言ったら絶対もう片方から「そらにぃは白雪七海の味方なの?」か「空哲君は義妹の味方なの?」って言われる気しかしないというね。
ここで水巻がようやく俺に救いの手を差し伸べてくれる。
「二人共落ち着いて。それと七海は住原君から一旦離れて、育枝ちゃんは七海から離れる。でないと住原君の腕が犠牲になるよ?」
「「あっ……」」
その言葉に二人がようやく俺の異変に気付いてくれたらしい。
てか気付いているならもっと早く助け船を出してくれ、水巻。
「てか七海は結局どうなったの? 答え出たの?」
「ううん。まぁ今聞いてもいいんだけどね」
「うん?」
水巻と白雪の会話に俺が首を傾げていると、白雪が言う。
「ちなみにお昼に話した件なんだんけど、どうするか決めた?」
なるほど。
そうゆうことだったのか。恐らく白雪が俺と会うまで部屋で一人考えていた事はこの事だったのかもしれない。っても俺もそうだったんだが……。まぁいいや。
「とりあえず吉野って言う人の所に一度行って話しを聞いて見ない事にはやっぱり決められないかなって思ってる」
「わかったわ。なら今から行きましょう」
「え?」
「だって行かないとわからないんでしょ? それに貴女達も気になるんだったら付いてきていいわよ。私がそれで押し通すから」
「ならそうさせてもらうわ」
「でも空哲君の邪魔はしたらダメよ。疾風新聞の関係者も間違いなくいるはずだから」
「わかったわ。私達は見守るだけと約束するわ」
水巻が返事をすると同時に俺は白雪に手を握られて案内されていた。そして俺だけに聞こえる声で「逃げずに戦うんだったら、堂々としてなさい」と言ってきた。そしてそんな俺の後ろを育枝達が心配そうにして付いてくる。
どうやら俺の心配が顔に出ていたようだ。
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