第14話 七海からのお誘い

前書き

 レビューしてくださった方ありがとうございます!これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします。できるだけ毎日更新で行きたいと思っていますので一応ご報告しておきます。(諸事情等で出来ない日もあるかと思いますがそこはお許しください)


おまけ

 第一章は二十話までの予定となっています。

 ここは三人の前哨戦程度に思って頂いても構いません。もっと言えば第二章、三章、四章に繋げる為に少し遠回りを……後は察してください(;^_^A


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ほら、七海頑張って」


 少し離れた所から水巻が白雪の背中を押している。

(頑張ってって、やっぱり水巻何か知ってたのか……でも頑張るって何をだろう)


 もしかして本を書いてとか?

 あーあり得るわー。それならこの白雪の緊張も。だって俺の過去知ってるもんな。でも今は過去のトラウマ抜きにしても精神的ダメージが大き過ぎてそもそも書けないんだよな~。

 とか俺が思っていると、白雪は水巻の言葉に勇気を貰ったのか俺の目をしっかりと見て言う。


「空哲君!」


「は、はい!」


 白雪の言葉に俺は背筋を伸ばして答える。

 そして俺の両肩を掴んで。


「私とお泊り旅行に行って欲しいの!」


 ……。

 …………――。

 …………――――。


 亜由美の部屋にしばしの沈黙が訪れた。


「…………え?」

「…………あれ?」

「…………うそ?」

「…………ん?」


 予想外の言葉に俺だけでなく、あろうことか水巻達までもが言葉を失っている。

 お、お泊り旅行?

(つまり二人きりで行きたいってこと)

 と俺の頭が解を導きだす。


「マ、マジで!? ふ、二人きりでぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 俺のテンションが一人勝手に暴走を始めたタイミングで水巻の声が聞こえてきた。


「七海?」


「なに?」


「二人で行くの? 私達の間違いだと思うけど。私は面白そうだから二人で行ってくれてもいいけど、どうする?」


 水巻がニヤニヤしながら白雪に言った。


「ふぁっ……? えっ……? うぅぅぅぅぅ」


 水巻の言葉に自分がなんて言ったのかをようやく理解し、自分が言った言葉の意味を正しく理解したみたいだった。白雪の顔が一瞬で真っ赤なリンゴへと変わると、視線をキョロキョロと部屋中に飛ばす。


「ち、ちがうのよ。たしかにそれはわたしのがんぼう……って、ち、ちがうの、えっと……うぅぅぅ、空哲君のいじわるぅぅぅぅぅ。ほ、ほんとうはね――」


 白雪の慌てようが最早尋常じゃない。もう何を言いたいのかが全くわからない。いつもどこか落ち着きがある白雪が後悔しているのか座り直した俺の目の前で両手を振ってなにかを必死に否定をしている。そして急いで誤魔化そうとしているがそれはもう遅いとようやく気づいた白雪は口を尖らせて、今にも泣き出しそうな顔になる。


「私達とお泊り旅行に行かない? が正解よ。住原君」


 そうフォローしたのは白雪の親友でもあり琴音とも仲が良い、水巻だった。


「実は七海今後の創作活動の為にこのGW(ゴールデンウィーク)を利用して色々な経験をしたいんだってさ。今の住原君は素人とは言え七海と同じ立場(創作する側)でもあるでしょ?」


 そうゆうことだったのか。

 俺はようやく水巻の言葉を聞いて、白雪が何が言いたいのかを理解した。


「確かにな。でも俺と七海じゃ話しにならないぞ。俺は素人、七海はプロなんだから」


「それは一理あるわね。でも今後住原君が本を書いていくなら皆との旅行体験もいいと思うんだよね。そう言いたかったのよね、七海?」


 水巻の声に白雪は胸に手を当て安心したのか、冷静さを取り戻し始めていた。

 それにさっきまで焦点が合っていなかったが今はそんなこともない様子。


「そ、そうよ!」


 それから大きく一呼吸をしてから。


「実はまた手が止まってね。まぁ理由はスランプとかじゃないんだけど。んで、今後の創作活動の参考兼息抜きになればなと思ってね。それで小町と琴音に相談したら空哲君も呼ばない? って話しになったの。わ、私が二人で空哲君とお泊り旅行するわけないでしょ! か、勘違いしないでよね!」


「ですよね……アハハ……」


 だよな。

 現実はそんなに甘くないよな。

 一瞬本気にした俺がなんだかバカみたいだよな。そりゃ内心わかってるよ。白雪がそんな甘いイベントを起こしてくれない事も。ガードが普通の女子に比べて固いことも。だけどあんなことをいきなり言われたら、やっぱり俺の事がまだ好きだからとか期待してしまうんだよ、俺は。それくらい男って言う生き物は単純でバカなんだよ。


「はぁ~、期待したのに……」

 

 俺が言うのもどうかとは思うけど、マジで止めて欲しい。

 これもしかしたらまだ脈あるんじゃねぇ、とか期待させられてどん底に落とされるのホント辛いから。

 勝手に期待してしまう俺もどうかと思うし、白雪の告白を断って育枝に告白しておきながらだけど、初恋の相手にそんな事を言われたらやっぱり諦めたつもりでも心が揺らいでしまうわけで。そもそも俺が白雪に対する想いが冷めたり、嫌いになったわけじゃない。ただ育枝と言う存在を失っては隣にいてくれる有難みを何度もこの身で実感していく内に、育枝の大切さと素晴らしさに気付いただけで、別に白雪に対する想いや好感度が下がったわけではない。


 だからそんな女の子から『まだ可能性はある』とか思える行動や言葉を言われるとどうしても心の中で嬉しくなって、心が躍っちゃうわけで。多分これが初恋とかじゃなかったらそこまでないのかも知れないけど、俺にとっては大事な初恋相手だからこそ余計に騙されやすいというか。


 今もだけど周りの温度と俺の温度が違うのもきっとそのせいだったりすると思うんだよ。


 でもね。

 よく考えて見たら別に不思議じゃないんだよね。


 そもそも初恋って人生で一回しかないじゃん。

 恋じゃなくても初ってつく体験や出来事って沢山の人の中で重要視されたり想い出深かったり、大切にされたりしてるじゃん。

 そう考えると、初恋って結構大事なんだよね。

 しかもだよ?

 白雪の告白を振ってもう気まずい関係になったよな……と思い悩んでいた時に更なる向こうからのアプローチ。もう白雪の女心がね……わからないんだよ。本当はもっと落ち込んだり、戸惑ったりするのが普通なのかなと思っていたけどどう見ても何か違うじゃん。むしろ前より可愛いなってるし、表情の変化が豊かになってるしでよくわからないんだよね。


『実は振られて想いがなくなった』とか『振られても友達だから』ってもしキッパリしているなら俺に対しての想いって所詮その程度だったのかとやっぱり思っちゃうわけよ。でもね、俺に気を遣って無理して表面上こうしてくれている気が実はさっきからするんだよね。そう考えると俺本当にどうしたらいいんだろう……って思ってしまうわけよ。


 ――なにが言いたいかというと。


 結果はあれだけど、絶対にこれはいけると思っていた育枝ですら俺は振られたわけ。育枝はこんなにも俺にも好きでいてくれて大切な異性として見てくれていると。でもそれが育枝の迫真の演技だって同じ家に住んで置きながら気付かなかった鈍感男なんだよ。そんな俺が白雪の感情を正しく把握できるわけがないってことだよ。


 本当に――女心はわからん。


 正直に言うと、今はちょっと怖い。

 今まで好きって言って貰える事はとても嬉しかった。特に親しい女子からだと尚更。

 そしてそんな女子とは少なからずすれ違うことはないと思っていた。

 だけどそれが過ちだと先日気付いた俺は――


 ――女子の言葉を信じていいのかがもうわからない。


 恋愛が絡まなければ大丈夫なのだが……。

 育枝ってもしかして白雪に嫉妬させる為だけに俺に『大好き』って言ってくれてたのかな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る