第2話 幼馴染


「お前はバカか! 死ね! アホ! ドジ! マヌケ! これどうするんだよ!? これからも育枝とは同じ家に住んでいる以上逃げれるわけないだろ! これからどうやって会えばいいんだよ!? どんな顔して、どんな気持ちでこれから家族として関わっていけばいいんだよ! 少しは後先考えろよ、オレ!」


 取り返しのつかない事態に俺の頭がパニックになる。

 どうするんだ? この後どうやって二人で同じ家で暮らしていけばいいんだよ?

 マジでやらかした……。


「普通に考えて、お門違いも甚だし過ぎだろ!? あそこまで育枝が本気なんだ、だから絶対に行けるってアホか!? あれは育枝なりの最後は華々しく飾ってやるから頑張ってこいって言う迫真の演技だと何故気付かなかったんだ? なんで全部実は俺への好意で本気だと思っていたんだ。育枝が昔から俺をからかっていたのは知っていたじゃないか。あ……本気でアプローチしてくれてる! ……そう思った時点で俺はクズ野郎だぁーーーーーー!」


 頭を抱え朝から後悔。

 これも青春の一ページ……って無理だろ!

 マジでこれからどうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? どうする? マジでどうするんだ!? 


 頭が混乱し始める。

 今度はタオルケット蹴り飛ばし、そのまま床に土下座の姿勢で座り、頭突きをする。

 痛みより感情の変化が激し過ぎて痛みを感じない。


 これはマズいと思った俺は部屋の窓を開けて、空気の入れ替えと同時に気持ちを落ち着かせる。そのまま外の新鮮な空気を吸い、ゆっくりと肺に入れる。そして一気に吐き出す。




「青春何てクソだぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」





「朝からうるさい! ご近所迷惑を考えなさい!」


 隣の家の窓が勢いよく開き、声が飛んでくる。

 そして目の前にいる深みのある青髪ロングの少女――中田琴音(なかたことね)だ。


 どこぞのラブコメテンプレートと同じく隣の家には幼馴染の姉妹が住んでいる。長女の琴音、次女の亜由美(あゆみ)は何を隠そう、天才姉妹とまでご近所の人から呼ばれている。姉妹揃って俺が人生の一大イベントを攻略している間、彼女達は春休み期間から短期の海外留学をしていたのだ。場所は確かオーストラリア。日本語は勿論の事、英語もペラペラ。それだけでもハイスペック姉妹なのだが、二人とも可愛いだけでなく、絵がとても上手と正に才能の塊みたいな幼馴染である。学校は俺と同じで姉とは同じクラス。二人はゲーム同好会に所属しておりゲームを作ったり、ゲームのシナリオを同人誌化してそれをコミケで売り活動予算にしたりと活動はゲーム制作以外にも色々としている。殆ど幽霊部員みたいなものだが。


 可愛いってだけでなく世間当たりも良く、ご近所さんから愛されている姉妹。

 俺から見たら正直それも才能だと思っている。

 そんな絵に描いたような姉妹が実は俺の幼馴染だったりする。

 簡単にまとめるとこうだ。


 長女――中田琴音。高校二年生で俺と同じクラス。

 次女――中田亜由美。高校一年生で育枝と同じクラス。


 二人は将来デザイナーになりたいらしく、その夢の実現の為に日々頑張っている。

 何度かネット上に公開した作品はかなり評価が良かった。昔は俺の作った短編小説の表紙を作ったり、挿絵を勝手に作り練習と言って投稿しろとうるさかったのだが、最近ネット活動は止めているらしい。何でも描きたいと思う作品がないのだとか。

 そんな俺よりハイスペックな姉妹と俺の部屋は同じ二階で向かいにある。

 その為、窓を開けて叫ぶと姉妹に向かって叫んでしまう形になるのでそれは当然うるさいわけではあるが。


「黙れー! 俺は今叫ばないと死にそうなぐらい情緒不安定なんだー!!!」


 俺はすぐさま反撃する。

 ただ内容はもう少し考えるべきだと思いつつも……俺は心の声をそのまま叫ぶ。

 なんだかんだ琴音とは小さい頃からの付き合いだ。

 最悪色々とバレても俺の味方ではいてくれると信じてる。

 仮に育枝の味方になっても俺の敵になる事はない。と勝手に思っている。


「そんなの知らないわよ! 久しぶりの我が家に帰って来れたと思ってのんびりしてたのに、アホな事言って叫ぶな! 心臓に悪い!」


 琴音がイライラしているのか頬がピクピクと僅かに動き、左手に拳を作りぶるぶる震わせた。女子だからと言って油断していると痛い目に合う拳である。護身術で鍛え上げた実力は確かなもので俺程度なら負けることはないだろう。


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後書き


明日まで一日二話の投稿予定です。


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私のモチベーションに繋がりますので。

仮原稿で完結まではデータを持っていますので第一節と同じく大体紙媒体の小説と同じぐらいの分量(十万文字を超えるぐらい)で第二節も完結する予定です。

後は誤字脱字、加筆など細かい修正をしながらやっていく予定です。

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