第3話 バレた

「はぁ、、、」


勢いよく閉めようとしてちょっと隙間ができた窓から流れる風にもかき消されそうなため息を吐く。


あの後、学校に無事着いた俺は、雷親父こと体育教師、豪賀原ごうがはらに大目玉を食らった。

四時限目の日本史は先生がほとんど生徒を見ないため、やってなかった課題や、スマホやり放題の時間である。


窓際の席で教科書を立て、その死角でスマホをスワイプする。

[O-gastoさんから知りました!作曲凄いですね!!]

[学生ってマ?俺とレベル違いすぎてびっくりするわ]

[これからもがんばってください!!]


ウッハー最高!!

マジ有名人やん俺。


ほんの前まで一人一人のトナリタにも返事していたが、そんな余裕もないほどにトナリタが溢れかえっている。


少し有名人の気持ちが分かる気がした。


にしても、、、学校に来てからまだたっつんと話せていない。

アイツは一気に有名人になった俺をどう思っているのだろうか。

、、、まぁどうせアイツのことだし、昨日と同じ様に軽くあしらわれるんだろうな。


少し、、、眠たくなってきた。

俺は机におでこをつけて、目をゆっくりと閉じた。


「さようなら。」


『さようなら。』


「あーやっと終わったわ!」

「お前部活?俺帰宅部、うぇーい。」

「お前ウザッ。」

クラスメイト達の毎日同じ事を言ってね?と思うような会話が聞こえる。

たっつんとはクラスが違うが、同じ部活に入部してるため一緒に部室に行くのがいつものお約束、、、、のはずなのだが、、、


合流場所に着いてからもう十分経っている。


、、、、、、、来ねぇ。

え?なに?俺のこと嫌いになったの?

いや昨晩いきなり有名になってイキってたのに嫌気指しちゃった?

ごめんて、そんなつもりじゃあの時はテンションが、、、、、って誰に話してんだ、俺。


偶然通りかかったたっつんと同じクラスメイトの直樹なおきに聞いてみることにした。


「直樹、たっつんは?」


「たっつん?」

少し右上を見た後、目の前にいる冴えない顔をした直樹は口を開いた。


「あぁ、アイツなら体調悪いって保健室行ったような、、、」


「サンキュー!!」


直樹の話を最後まで聞かず、俺は保健室へと足を動かした。


「えぇ!?あぁ待ってよ!!」


直樹が俺を引き止めようとする声も俺には聞こえてはいたが無視した。

なぜなら、アイツは一度話すと止まらなくなるからだ。(誰得情報)


階段を一気に駆け下り、保健室前へと到着。


思いっきりドアをガラガラっと開けると、そこにはもぬけの殻となった保健室が待ちかまえていた。


、、、、、What?


騙しやがったな直樹め、、、、、

今度会ったらしっぺ100回だな。

ちなみに俺のしっぺは痛い(だから誰得情報)


「なにしてんだ?」


不意に後ろから聞き覚えのある声がする。

この声、、、、まさかっ!!

勢いよく振り向くとそこにはたっつんの姿があった。


「たっつん?」

不意をつかれたような声を出す。


「よぉ、裕五。」

その声はやはり実家のような安心感があった。


「本物?」


「本物。」


「あ、そう。」


しばらく沈黙が流れる。


「俺探してたんだろ?部活行こうぜ。」


「お、おう。」


二人で廊下を歩く、ちなみに歩幅とかが揃って仲良く歩くのではなく、いつもたっつんが先頭を歩くのが俺たちの中でセオリーとなっている。


部室のドアが見えてきた。

ドアの上にある札には[軽音部]と書かれている。

たっつんはドアの前に立つとそぉっとドアを開けた。


「うぃーす。」


たっつんのいつもの挨拶だ。

彼がそう挨拶したあと、俺も続いて


「お疲れ様でーす。」


と言い入る。

これを挨拶テンプレと俺は勝手に呼んでいる。


「おっつぅ、調子どう?」


まず話しかけてくれた黒髪の先輩は天城あまぎ先輩。

そして、、、、、


「、、、、、、」


奥にいるずっと無言でドラムのバチをクルクルさせてるのが一ノいちのせ先輩。


、、、まて、俺は誰に先輩たちを紹介しているんだ?

考えたらダメそうなので深く追求するのはやめとこ、、、、、

(しかし俺はこの考えのを、改行入れて、あと46行で出すことになる。)

と、よくわからん事考えてると、後ろから音が聞こえてくる。


ガラガラガラっ


「あ、ども。」


「こんにちは~」


後輩の久保内くぼうちくんと、その後ろにいるのが志野しのちゃんだ。

これが、俺の入部している軽音部のメンバーだ。


「じゃ、早速始めますか。」


『はーい!』


────部活終わり────


よし、早速たっつんと話そう。

足をたっつんの方へ操作しようと思った矢先、思わぬ足止めを食らった。


「あ、あのっ!」


話しかけてきたのは、志野ちゃんだった。


「ん、どうした?」


目の前の彼女は少し俯きながらも照れた表情をしている。


「ち、ちょっと来てください!!」


彼女は俺の手を取り、部室の外へ連れ出した。

連れてこられたのは、校舎の裏、、、、

シンとした空気が二人を包み込む。


「ずっと、言いたいことがあったんです。」


志野が赤らめた顔を見せる。


「えっと、何かな?」


優しく俺は聞き返した。


「わたs

ハイっここでストップ!!

これを読んでいるぃ!この場面、一見いきなり告白と見せかけて、的外れな願いを言う的なアレか?と思ってるだろう?

______正解。(うぜぇ)


そう、彼女しのはどんな時でもソンな感じで話す子なのだ。

(なんかソンって読みずらくね?)


あ、ごめん。

話し戻すね。


「私っ、先輩の、、、」


俺はまた、優しく聞き返す。


「先輩の?」


彼女は勇気を振り絞りこう言った。


「これっ、先輩のっアカウントですよね?」


し っ て た

じゃないっ!!

え?バレた?後輩に、バレた?

「ええええぇっと?」


「だから、これ先輩のアカウントですよね?」


、、、どうする?

このまま白を切ることもできそうだが、、、、、


「なんでそう思ったのかな?」


偉い、偉いぞ俺。

まずは何で知ったかを聞くべきだ。


「私、O-gasto君の大ファンで、昨日アカウントのぞいてみたら、、、これが。」


彼女は俺にスマホをグイっと、まるで水戸黄門の印籠を出す格さんかのように見せつけてきた。

そこには俺の例のトナリタが映っていた。


「この歌、先輩たちのですよね?」


うッ!

斎藤は力尽きた、、、、、、


「そうだよ、それは確かに僕のアカウントだ。」


俺がこの言葉を発した瞬間、彼女の顔が太陽のように輝きだした。


「やっぱりそうなんですね!!」

「もしかしてO-gasto君とは前からお友達だったんですか?あっそれとも普通にあのトナリタで初めてだった感じですか?裏とかで打ち合わせとかしたんですか?」


Oh......

まさか志野ちゃんがこんなにオタクだとは思わなかったぜ。


「あ、あのさ、この事は誰にも言わないでね?」


志野は自信満々に


「はいっ!もちろんです!!」


と言い放った。


はぁ、一時はどうなるかと思ったが、志野ちゃんが物分かりよくて助かった。

オタクだったのは驚いたけど、、、、、、


あ、というかたっつん。

今日はたっつんと話したかったのを今思い出した。


「ごめん、質問はまた今度でいいかな?」


志野は少しがっかりしながらも


「いいですよ。」


と答えてくれた。


よしっ、じゃあ部室に、、、って

俺よりも遥か遠くに見える校門には、たっつんの後ろ姿が見えた。


もう帰ってんじゃん!!


俺は全速力で部室に戻り、バックを持って待ちきれなかった大砲の玉のようにたっつんを追いかけた。

今、俺の脳内に最近、活動休止した某有名男性アイドルグループのH●ppinessが流れている。(最後の最後で誰得情報)


ありがとう、あ●し。


俺は帰っていくたっつんの方に向かって走り出した。

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有名人にフォロー貰ったけど有名人の正体がリア友だった 早坂楼 @Lor9031

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