6-2

 連休前の金曜日。仕事から帰って自宅のリビングで寛いでいると、不意にテーブルの上のスマホが鳴った。

 画面を見てみると、野上の電話番号が表示されている。

 俺は通話に出た。


『今、いいですか?』


 遠慮の感じられる声が聞こえて、俺は返信する。


『大丈夫だ。家で暇してる。何か用か?』

『あの、土日って空いてますか?』


 土日か。幸い予定はない。


『何もないな』

『よかった。実は二日かけて遊びに行こうと思いまして』

『どこに?』

『前に撮影で行ったプールです』


 ああ、あそこか。錦馬に護ってと言われたのを思い出す。


『たしか、スヤマ・ウォーターランドだったか』

『そうです。あの時、私チケット貰ったじゃないですか』


 そういえば、MVPに選ばれた野上はチケットが送られてたな。


『それじゃ、貰ったチケットで遊びに行くってことか?』

『はい。後でなっちゃんも誘うんですけど、明日から明後日まで三人で行きませんか?』


 一泊するとなれば着替えが必要になるな。急に誘われても困る。

 俺は暗にそう伝えるつもりで返信する。


『泊まりがけなのか。すぐに準備できるかな』

『大丈夫ですよ。足りない物があってもホテルで買えますから』


 それなら身の回りの物や着替えだけ持参して、あとはあっちで適宜買えばいいか。

 野上が誘えば錦馬も参加するだろうし、源次郎さんの代役で野上のマネージャーも兼ねた時と同じメンバーになるな。きっと荷物運び的な役をさせられるだろうが、野上と錦馬は仲が良いから俺の気苦労もないだろう。


『どうします。行きますか?』

『行くよ。明日の何時ぐらいからだ?』

『九時ぐらいにいつもの駅前で集合、でいいですか?』

『俺は車で駅前まで行けばいいのか?』

『はい。お願いします』


 頭を下げている野上が想像できるような声が返ってくる。

 とりあえず、着替えを用意するか。

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