アンカーはどこっ『安生と清子』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054960274881
1000文字以下にまとめられた中に圧倒的に物語が凝縮されていて、とても面白かったです。
そして他のかたの応援コメントがおっしゃるとおり「物語がここから始まる感」がたまらなく良くて。いや終わるんですけど。死ぬ感すごくあるんですけど。その死に至るまでの過程(安生がいない間の清子の話)とか、ここからどうなったかとか、とにかくもう物語の源泉です。カクヨムバトル内外で何度も言ってる気がするんですけど物語を膨らませる余地があったり何か読んだひとに創作のきっかけを与えるだけの余韻のある物語は名作です。これはその点で素晴らしすぎます。アンカーショットはどこですか。アンカーショットは、どこ、ですかっ。書きたいっ。
そしてとても素晴らしいというか技術が優れているなこれは真似できないなと思ったのは最初の一文の表現(『流れ狸』以来二度目)。
視覚誘導って分かりますか。たぶん漫画の表現だったと思うんですが、読みやすいように読者の視線に合わせて画角を調整して、そしてインパクトシーンで一気に視線を切って弾けさせる、みたいなやつなんですけど(ごめんなさいうろ覚えです)、最初の一文の「窓の『外側』」がめちゃくちゃうまい誘導になってるんです。
まっとうに読み進めるならば窓の外の「地面」が濡れていて部屋がオイルだらけということは外が雨であり二人の関係が湿ったものになっているという話になるんですけど、「その地面」にライターを投げることで窓の外がすなわち部屋の外ではない可能性が明示されていて、たとえば監房の面会室だったり、障子だったり、とにかく部屋のなかに窓というイメージは結構存在するんですよ。そうなると実際は濡れている地面はオイルを指している、という感じにも読み取れます。
そして極めつけが、このふたつがダブルミーニングではなく本当に存在できるという点です。ここが他のダブルミーニングとは違いそしてこの作品が最高である点にも繋がるのですが、「窓の外(部屋外)が雨」と「窓の外(部屋内)がオイル」のふたつは、ぶつからずに存在できて。これはダブルミーニングのような「2つ以上の解釈」ではなく、「同一に存在できて
『流れ狸』のときも散々書いたんですがまた言わせてくださいこの書き出しは最高です。二回読むのをおすすめします。
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