第40話・銭湯
明花に呼ばれ、意識を取り戻したのはいいが、体中の感覚がない。
「め……明花?」
かすれた声が出た。
「そうだよ!」
なんとかして周りを見渡すと、黒い液体みたいなのと戦っている仔春の姿があった。
「なん……だあれ……?」
さっきまで胸が押しつぶされていたかのようで、声が出しにくい。
「わかんない、いきなり壁が爆発したらいきなり出てきて……」
体に巻いているタオルを握って恐怖で震えているいる明花の手を握りまた黒い液体のほうを見る。
仔春は液体との距離をとりながら、人差し指を液体のほうに向けた。指には何か書かれた紙を巻いていた。
「止まれ」
仔春がそういうと液体の動きが止まった。
そうすると真保が液体に向かって何かを貼る。
すると液体の一部が蒸発した。
「……っ」
真保は液体から距離をとろうとしたが、飛んできた液体に当たってしまった。
とっさに腕でかばったが、皮膚が溶けて赤くなった。
「真保!」
「大丈夫、灯夜は見てて、私達、徐霊師の戦い」
真保はそういうとまた液体に向かい式神を放った。
すると液体の動きが変わった。
突然人のような形を作り、真保に向かって殴りかかった。
「止まれ」
また仔春の声で動きを止め、真保に一部を蒸発させられる。
しかし、すぐ液体からの鋭い攻撃で真保を守る式神が溶けていった。
「真保、チェンジした方がいいんじゃない?」
「……いける」
そう言った真保の体は、赤く腫れあがっていた。
そんなのを見ているだけしかできない。
手助けしようにも、どうすればいいのか、何をすればいいのかわからない、そもそも割り込めるスキがない。
前の記憶の自分は、こんな状況の時はどうしていたんだろう。
『シリタイカ、オノレノ過去が……』
知りたい。
『モット、深淵に近ヅクゾ』
俺はその深淵を知らない。知りたい。自分の過去につながる記憶を……。
『やっぱり、君は戻ってきちゃうんだね。それが優しさなのか、偶然なのかわからないけど。……けど、一つだけ約束して』
その時、頭の中にあった鍵のようなものが外れるような感じがした。
『絶対に、死なないで』
抑えられていた栓が外れ、過去が流れ込んできた。
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