第28話・始動5

 部室の隅にあった梯子を使い、灯夜は天井裏を覗いた。

 中はガラクタのようなものが多く積み上げられており、人1人分しか道があるだけだった。

「お兄ちゃん、どんな感じなのー?」

「これは2人も入れそうにないから、俺が1個1個下に運んでいった方がいいかもしれない」

「灯夜くんがそう言うのならそうしよう。まあ、私と真保は前からその中がガラクタばかりなのは知ってるから最初からそうしようとしてたんだけどね」

「……あ、灯夜、奥にある棚の中身はそのままで良い」

「わかった」

 真保の忠告を聞いた灯夜はガラクタの掃除を始めた。

 ガラクタは全てが何かしらの機械の一部分を繋ぎ合わせたような形状をしており、アンテナのようなものから小さな画面が付いているものが積み上げられているようだ。

 灯夜はそのガラクタを一つ一つ天井裏から真保達に渡していった。

「あれ?」

 二割程片付いた頃、ガラクタの中から本が出てきた。

 手に取って開いてみると、男女がお互いの手を繋ぎあいながら向かい合って……

「っ!!!!」

 灯夜が次のページを開こうとしようとすると、一瞬のうちに本が奪われ、灯夜が振り向くと、真保が後ろに立っていた。

「見ましたか?」

「いや、ちょっとだけ……」

 灯夜がそう言うと真保は諦めたような顔をした。

「ここら辺にある本は私のなので、見ないでくれると、嬉しいです」

「う、うん」

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