第4話・メモリーロスト4

 俺が帰りの支度をしていると教室の開いた窓から一匹の黒猫が入ってきた。

 一瞬驚いたが、周りの生徒達は全く気にしていない様子だった。

 この辺りだと普通なのだろう。

 俺は帰りの支度を済まして教室を出た。

 中高共通の学校だが終わる時間は違うようで自分は一人で校門を出た。

 少し道を歩いているとさっきの黒猫が立ってこっちを見ていた。

「?」

 俺がこっちを見たのがわかったのか黒猫は狭い道に入ってまたこちらを見た。

「来いってことか?」

 まさかと思ってそう言ったら黒猫が頷いたような仕草をした。

 後々考えるとほんとにそうだったかわからない程だったのにこの時の俺はそう思い込んでいた。

 そして俺は黒猫の後を追いかけていった。

 黒猫はちょくちょく俺の方を見ながら奥に進んでいった。

 黒猫は塀の上を歩いたり人が通れるギリギリの道を進んでいった。

 俺はその道を進む前に制服をカバンにしまい続いていった。

 そして数分後狭い道から出ると目の前に古びた家の前に出た。

 黒猫はその家に近づいて器用にインターホンを鳴らした。

 少しかすれたチャイム音がして中から俺より5~7cm位でフードを目が少し見えない程に被っている小さい子供が出てきた。

「なんだクロすけ、客か?」

 その声は高く少女だとわかる。

 少女は言って俺を見ると少し驚いたような顔をして。

「なんか用?」

「えっと、なんとなく黒猫についてきただけで……その、用とかはなく」

「黒猫」

 少女はそう言うと黒猫を抱き抱えて。

「この猫?」

「うん」

 俺がそう言うと少女は黒猫と話をするみたいにじっと目と目を合わせてまたこっちを向いた。

「名前は?」

「え?灯夜」

「東川中高学校の人?」

「う、うんそうだけど……」

「よし、じゃあ明日の放課後、中学校舎の3-B教室に来てくれる?」

「は、はあ」

 俺がそう言うと少女はメモ用紙に何かを書いて渡してきた。

 それを見ると。

『中学3-B 小川おがわ 真保まほ

「じゃあ、よろしく」

 小川さんがそう言うと俺はあることを思い出した。

「あの~、通りに出る道ってどっちですか?」

「……え?」

 そして俺は帰り道を教えてもらい無事に家に帰ってきたのであった。

 そういえば、3-Bって明花のクラスだったな。

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