失望

増田朋美

失望

失望

今日は、少し涼しくなってきて、少しずつ秋めいてきたようだ。秋といえば、紅葉を見に行ったり、芸術に親しんだりするシーズンだったが、今年の秋は、何処かに出かけることもできず、家の中で映画でも見るしかなさそうな秋だった。

まあ、つまらないということも確かだが、それを基軸に儲かっている仕事もある。テレビゲームとか、そういうものだ。でも、それだけではやっぱりつまらないなという気持ちになってしまうのだった。

そんな中でも杉ちゃんは、依頼された着物の仕立て直しを一生けんめいやっていた。最近、リサイクル着物が流行っているせいか、リサイクルで購入した着物を、もう一度着たいから、着れるように直してくれという依頼が多いのだ。でもそれがちゃんと着れるようになるには、かなりの手直しが必要になるので、それでは、大幅に仕立て直すことも、珍しくはない。中には、着物として着ることはできず、羽織や、コートなどに仕立て直すこともある。杉ちゃんがやっているのはその一例で、小さいサイズの着物を長羽織に仕立て直しているのだった。

「いいなあ、杉ちゃんは。そうやって、やることが在るんだからな。」

と、蘭は、しくもくと針を動かしている杉ちゃんに、一寸うらやましそうな目で見た。蘭のほうは、簡単な手直しを求められる程度であることが多く、仕事は最近暇になっている。大掛かりな龍などを彫ることはほとんどなくなった。まあ、アリスの仕事もあるから、食べていけないことはないのだが、それにしても蘭は、生活がうらやましいこともある。

「ああ、あの、吃音の布団うちが、家族に着せたいから作り直してくれって言って、持ってきたのさ。なかなか、あの布団うち、可愛いものを持っているよな。」

吃音の布団うちは、有森五郎さんの事である。蘭はまだ彼と話したことはないけれど、杉ちゃんからうるさいくらい聞かされていたので、彼の存在には気が付いていた。蘭は、その五郎さんという人に、ある計画を託していたのであった。

「杉ちゃん、そういう時は、吃音の布団うちとはいわないで、ちゃんと、有森五郎さんというんだよ。」

と、蘭は、杉ちゃんに言うが、杉ちゃんは、口笛を吹きながら、針と糸を動かしていた。そして、蘭が、一寸退屈してきたなというと、

「よし、できたぜ!」

と、杉ちゃんは、完成した長羽織の糸を切った。

「おお、すごいなあ。もうできちゃったのか。」

蘭が驚いていると、今日、五郎さんが取りに来るんだよ、と、杉ちゃんはにこやかに言った。そして、仕立て直した羽織をたたんでいるその時、インターフォンが、音を立ててなる。

「おう、どうぞ、入れ。」

と、杉ちゃんが言うと、し、失礼いたします、と不明瞭な発音の声が聞こえてきた。この特徴的なしゃべり方が、五郎さんだなと蘭は思った。

「お、じゃまいたします。」

変なところで切ってしまうのも、仕方ないことだった。多少聞き取りにくいが、まあ、そうなってしまうのは、仕方ない。

「し、失礼、致します。あの、羽織は、できました、で、しょうか。」

五郎さんは、居間に入ってきた。

「おう、今できたよ。これでいいのかな?」

杉ちゃんは仕立てた羽織を、五郎さんに渡した。

「ひろげ、ても、いい、で、しょうか。」

五郎さんがそういうと、ああいいよと杉ちゃんは言った。五郎さんは、すぐにその羽織を広げた。

「よかった。これで、着物を捨てることなく、羽織として着なおすことができます。これくらい、可愛かったら、喜ぶと思います。」

「誰かにあげるんですか?ご家族とか?」

蘭が、五郎さんに聞くと、

「え、ええ、母にプレゼントするために、羽織を買ったんですが、寸法が小さすぎることを忘れていまして。ぼ、僕、バカですよね。そんなことも忘れるんだから。」

と、五郎さんは答えた。多分、着物をプレゼントするのは初めての経験で、寸法を図るのを忘れてしまっていたのだと思う。

「ずいぶん、親思いなんですね。そんなことをしてあげられるなんて、お母さまも喜ばれるんじゃないですか。」

と、蘭が言うと、

「い、いやあ、寸法を間違えるなんて、何をやっているんだと笑われました。」

五郎さんは頭をかじった。

「そうですか。あの、失礼ですが、この後何か用事がありますか?ちょっと僕からのお願いを聞いてほしいんですけどね。」

と、急いで本題を切り出した。杉ちゃんが五郎さんに椅子にすわるように促した。

「は、はあ、一体なんでしょうか。」

と、五郎さんは、急いで椅子に座る。

「あのですね、あなた、水穂、つまり磯野水穂さんに布団を縫ったそうですね。」

蘭がそう切り出すと、杉ちゃんが蘭にまず名乗れと言った。そうだったと思った蘭は、自分の名前と、職業は刺青師であると自己紹介した。何も怖い人じゃないよと杉ちゃんは隣でにこやかに言った。

「え、ええ、僕が、縫いました。僕が縫った布団を、あの方が買ってくださいました。」

五郎さんは正直に答えた。

「じゃあですね、お願いなんですが、水穂に、積極的に医療を受けるように言ってもらえませんか。あの、90を超えた主治医ではなくて、もっと、権威のある医者に診てもらうように、あなたから言い聞かせてもらいたい。」

蘭がそういうと、五郎さんは、変な顔をする。そりゃそうだろう。いきなりこんなお願いをされて、引き受けたという気にならない。

「でも、きゅ、90を超えたお医者さんで、あ、るからこそ、安心できるということもあるんじゃないですかね。」

五郎さんは、そういうことを言うが、蘭は、

「そこを何とか。あなたのような不自由な方であれば、あいつも、僕たちの話に耳を傾けると思うんです。あいつは、人のいうことにはなかなか耳を貸そうとはしないで、ひたすらに弱っていくばっかりですから。」

と、五郎さんに頭を下げた。

「バカだなあ蘭は。それじゃあ五郎さんが、吃音者であることを悪用しているような感じじゃないか。ちょっとそれは、五郎さんがかわいそうなんじゃないの?」

杉ちゃんが、そう言い返すと蘭は、

「そういうひとだから、言ってもらいたいんだ!」

と、思わず言った。

「そういうひとだからねえ。だけど、無理だと思うよ。水穂さんの意志を曲げることは、何もできないだろう。それは、誰が言っても同じだよ。」

杉ちゃんがそういうと、

「いや、蘭さんがそれくらい思っているんだったら、ぼ、僕はやらせていただきます。」

と、五郎さんは言った。

「はあ、よしなよしな。そんなの、水穂さんが、可愛そうな思いをするだけじゃないか。それをさせたら、また可愛そうなことになる。」

杉ちゃんがそういうと、

「いいえ、ぼ、僕も、水穂さんには生きていてほしいと思ってますし。何なら、こ、こんな奴でよければの話ですけど、水穂さん、の、病院に付き添ってもいいです。」

と、五郎さんは言った。

「バカだなあ。そんなことしても無駄だと思うけど?どうせ、医療機関をたらいまわしにされて、どこにも行けないのがおちさ。」

杉ちゃんはカラカラと笑った。

「い、いやあ、誰でも、生きたいという気持ちは、もって、る、と、思います。僕、だっ、て、こんな、風に、ちゃんと、は、なせない人間ですけど、生きたい、というか、生きなければいけない、と、いう気持ちは持ってますし。」

五郎さんの発言は、発音は不明瞭だし、途中で切れてしまうので、理解をするのに時間がかかるが、でも、何を言いたいかは、表情でわかった。つまり誰でも生きたいという気持ちは持っているということだ。

「そうだけど、それは、健康な人に限っての話。お前さんだって、僕だって、もちろん水穂さんも、裏ではなにを言われるかわからない。また今年は間が悪い患者にあたったものだとか、そういうえらい奴ら同士で、愚痴を言い合っているところを、水穂さんに見せたくないのでね。そういうことはさせたくないよ。僕は、反対だな。」

杉ちゃんは腕組みをしてそういうが、

「い、いやあ、やってみなければ、わ、かりません。とにかく、やってみることではないでしょうか。」

と、五郎さんは言った。

「それに、水穂さんが、ただ、悪、く、なるのを待っているようでは、なんだか社会への甘えという、こ、と、にもなるのではないかと思うんですよ。」

五郎さんの話は確かにそうなのであるが、現実問題、それが、実現できるようにするためには、偉い人の力を借りる位しか方法はないのであった。確かに五郎さんのいうことはとても素晴らしい発言であるのだけれど、その通りに生きれるかという保証はほとんどない。それでも、そういう気持ちで生きなければならないこともまた確かだけど。

「じゃあ、五郎さん。お願いです。水穂を病院へ連れ出してやってください。ただ、お願いなんですけど、僕が、この計画を口にしたということだけは伏せてください。」

と蘭は、もう一度五郎さんに頭を下げる。杉ちゃんは、ぴいーと口笛を吹いたが、五郎さんは、

「わかりました。やります。」

と、はっきり言ってくれた。

翌日、五郎さんは、杉ちゃんに連れだって、製鉄所へ行った。さすがに製鉄所の場所をしっかり把握していなかったので、正確な道案内をするために、杉ちゃんが一緒に行かなければならなかった。

「まあ、無理はしないでくれよな。水穂さんもかわいそうな人だからさ、あんまりかわいそうだと思ったら、もう中断してくれていいよ。」

と、杉ちゃんは言ったが、五郎さんは、いいえ、わかりましたとだけ言った。杉ちゃんは大きなため息をつきながら、五郎さんは、一寸緊張した様子で、製鉄所に入った。製鉄所はインターフォンがないので、杉ちゃんは勝手にどんどん入って行ってしまった。

杉ちゃんが四畳半に行って、ふすまを乱暴に開けると、中には花村さんがいて、指を口に当てた。

「花村さん一体どうしたの?」

と、杉ちゃんが言うと、

「今、眠ったばかりなので、一寸静かにしてやってくれますか。さっきまで、大変でしたから。」

花村さんは、二人を牽制した。なるほど、花村さんの近くに、血液で真っ赤に染まったタオルがあったので、何が起きたかすぐわかった。

「い、つ頃、起きますかね。」

と、五郎さんが聞くと、

「そうですね、たぶん、夕方まで目を覚まさないんじゃないですか。」

と、花村さんは静かに答えた。

「じゃ、じゃあ、一寸、起こしてもいいでしょうか。」

と、五郎さんが言う。

「このままだと、水穂さん、ほんとに、ダメになってしまうと、思うんで。」

五郎さんは、水穂さんの枕元に座って、水穂さんの体をゆすった。

「水穂さん、お、起きてください。だ、い、じな話があるんです。」

水穂さんは、薬が回っているのか、二、三度頷いたが、まだ眠いらしく、起き上がろうとはしなかった。

「ぼ、僕の、話を聞いてくれますかね。僕が、お願いしたいことが在るんですけれど。」

花村さんが、何か特別な話があるんだなと思ってくれたのか、水穂さん、一寸彼の話を聞いてやってくださいと、彼の体をそっと支えて、布団の上に座らせてくれた。

「まだ眠いのは仕方ありません。でも、五郎さんがちょっとお話があるそうですから、聞いてやってください。」

「はい。」

水穂さんは、まだフラフラするように見えたが、何とか目を開けてくれた。

「み、水穂さん、あの、これは、僕からの、お願いなんですが、今の、先生では、な、く、て、もっと大きな病院に行くとかして、何とか、体を直すように、して、くれませんか。僕、病院に、い、くんだったら、つきあって差し上げますから。」

水穂さんは五郎さんの言葉にちょっと驚いたようだった。まさか五郎さんから、そんなセリフを言われるとは思わなかったのだろうか。

「まあ、確かにそうですが、、、。」

水穂さんが小さな声でつぶやくと、

「僕、も、こういう、吃音者ですし、水穂さん、の、事情も知っています。だから、お互い、それ、に、甘えない、よ、うにしましょうよ。」

と、五郎さんはきっぱりといった。

「そうですね。私も、彼の発言は、その通りだと思いますよ。水穂さん、一度だけでいいですから、権威のある呼吸器外科とか、一寸行ってみましょうか。彼が一生懸命自分も付き添うと言ってくれているんですから、悪いようにはしないと思いますよ。移動に関しては、何か福祉サービスのようなものを使えばいいでしょうし。」

花村さんが、五郎さんの言葉を翻訳するように言った。

「やっぱり生きている限りは、まえむきに生きていかないとだめなんじゃないかと、彼は言いたいんだと思いますよ。」

「は、花村先生、ありがとうございます。僕、ちゃんといえなく、て、申し訳ないです。」

五郎さんは、申し訳なさそうに言ったが、花村さんも通訳をするような形で話をつづけた。今はインターネットで病院の予約も取れる時代だ。さっそく、製鉄所近くにある大規模な病院の一つである、富士中央病院に行ってみようということになった。そういう電話をしないで予約が取れることが、唯一の長所なのかもしれなかったが。

さて、約束の時間。花村さんは予定があるため、付き添うことができなかったが、五郎さんと水穂さんは、中央病院に向かった。杉ちゃんも、こういう時は、行ってもしょうがないからといって、付き添わなかった。ただ、五郎さんだけが、水穂さんに付き添って、病院行きのタクシーに乗った。この時製鉄所の利用者たちは、誰も手伝おうとか、頑張ってねとか激励の言葉を出したものはいなかった。皆、結末がわかっているような、そんな顔して見送っていた。

とりあえず、病院の前まではたどりつくことはできたが、病院の入り口前で水穂さんは座り込んでしまった。病院には、もちろん、ほかの患者さんも来ていたけれど、みんな水穂さんの着物を見て、いやな人がやってきたという顔をして、逃げて行ってしまった。医療者も看護師も、その場を通らなかった。五郎さんは、水穂さんを背中に背負って、行きますよと言って、とりあえず、病院の入り口をくぐる。受付に行って、受付係に、

「すみません、インターネットで予約した、磯野水穂さんです。調子、が、悪そうなので、どこか、べっし、つ、で、待たせていただけませんか。」

というが、五郎さんの不明瞭な発音と、その変な文節の切り方のために、受付係はぽかんとしたままであった。

「あの、どこ、か、べっ、し、つ、で、ま、たせて、いただけないでしょうか。」

五郎さんは、一生懸命そういうが、受付係は別のものを呼んだ。多分彼女の上司だろう。その女性は、冷ややかな目をして五郎さんに、

「どなたか流ちょうに言葉を話せるかたはいらっしゃいませんか。」

といった。五郎さんは、

「ぼ、くだけです、付き添いは、だ、れ、も、いません。」

と言ったのであるが、

「ここは病院です。ちゃんと患者さんのことについて、正確に話せる人がいないと何もなりません。あなたのような障害のある方ではなくて、ちゃんと付き添いができる方と一緒に来てください。」

と受付に一蹴されてしまった。

「い、え、付き添いのできるのは、僕、だ、けです。お願いです、何とかして、水穂さん、を、見てやってもらえないでしょうか。」

と、五郎さんは一生懸命そう訴える。その真剣な顔つきに、受付係も驚いてしまったようだが、水穂さんの着ているものを見て、また冷たい表情をした。

「お、願いします。水穂さん、見てやって下さい。僕は、話すことはできなくても、書いたりすることは普通にできます。」

五郎さんがまたそういうと、受付係は、ちょっとこちらにいらしてくださいと言って、二人を待合室に通した。そして、

「ここで座っていてください。」

と言って、さっさと受付業務に戻ってしまった。水穂さんは、せき込みながら、椅子に座りたいと言った。五郎さんは、水穂さんを椅子に座らせる。そして、自分も隣の椅子に座ったが、待合室によくあるベンチイスではなく、それはパイプ椅子で、とても長時間待っていられるようなものではなかった。取り会えず、名前を呼ばれるまで、しばらく待っていなければならなかったが、いつまでたっても、磯野水穂さんと呼ばれる気配はなかった。水穂さんは、椅子に座っているだけでも苦しそうだ。五郎さんは、そんな水穂さんを心配する。大丈夫ですかと声をかけるが、どうしても返答は来ない。時々、せき込んでいる、背中を撫でてやるのが精いっぱいだった。

その代わり、周りの患者たちは、どんどん呼ばれて、診察室へは大勢の患者さんたちが、出入りしていた。ある人は、家族と一緒に、またある人は、ヘルパーのような人と一緒に来ていたが、水穂さんの

着物を目にすると、みんないやそうな顔をするのだった。それを口に出していうことはなかったが、彼らは、けっして水穂さんのことを好意的に見てはいないことは確かだった。それは女のひとであったら、本当に耐えられないことかもしれなかった。でも、五郎さんは、そんなことは気にしていないのか、平気な顔をしていた。

やがて、最後の一人の患者が診察室を出てきた後、やっと磯野水穂さんと名前を呼ばれた。もう立って歩けなかった水穂さんは、五郎さんに背負われて、診察室へ入った。

「お、ね、が、いします。」

と、五郎さんは、診察室に入って、頭を下げた。医師は、水穂さんに椅子に座ってと指示を出したが、

「あの、水穂さん、も、う、つらいので、横の台に、ね、か、せ、てやっていただいてもよろしいでしょうか。」

と、五郎さんは言った。確かに発音は不明瞭であるが、医者には通じたようで、仕方ありませんねといった。五郎さんは、水穂さんを台の上に寝かせた。医者は、水穂さんの病歴も職歴も何も聞かずに、ただ、無理やり着物を脱がせて、聴診をした。そして、パソコンの画面を何回かうつしぐさをすると、

「ああ、栄養失調による衰弱ですね。」

とだけいった。

「まず初めに、滋養をつけさせることですな。其れからもう一回来てください。」

其れしか言わない医師に、五郎さんは、

「ま、まってください、け、んさとかそういう、こ、とはしないですか。」

といったが、

「だってここまで衰弱してしまったら、もう滋養をつけるしかないでしょう。それだけしかありませんよ。」

と医者は言ってさっさと片づけを始めてしまった。

「ま、まって、く、ださい。く、すりはもらえんのでしょうか。何か、僕、たち、に、できることはないですか。」

と、五郎さんが言うのであるが、医者は、吃音者に何がわかるという顔をして、診察室から出て行ってしまった。看護師が、二人に終わりですよと告げる。五郎さんは、水穂さんの着物を着せなおし、また水穂さんを背中に背負って、診察室を出た。二人には処方箋も何も出されなかった。ただ誰もいなくなった待合室で、二人は、簡素と言える会計を済ませた。もう、こんな人から、お金なんかもらってもしょうがないという顔をしている受付係が、受付に戻っていく様を見ながら、五郎さんは水穂さんに、

「ほかの病院に行きましょう。お、や、くしょだから、こういう、ところは、ダメなんだ。そう、じゃなくて、民間、の、診療所みたいなところにい、けば、また、見てもらえるかもしれない。」

と、言ったが、水穂さんは静かにくびを横に振る。

「な、なんでですか。だって、だ、れでも、医療を、うけ、る権利は、あるはずですよね。」

五郎さんがそういうと、

「いいえ、現実はこういうものですよ。」

水穂さんは静かに言った。

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失望 増田朋美 @masubuchi4996

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