幕間
石造りらしき地面の冷たさ。目を開けると、そこは戦闘が始まる前にいた空間。周囲には先程と同じ人々が、戦闘開始前と何ら変わらぬ姿で佇んでいた。先程戦ったばかりの氷雨紫苑も涼しい顔で立っている。と……またしても唐突に、『神様』の声が響いた。
『というわけで第1戦終了! 勝者は白露さん、夏目潤さん、氷雨紫苑さん、そして岡本真梨さんッ! おめでとうございます!!』
(……こいつ、自分が楽しみたいだけじゃね?)
(……あはは……)
やたらとテンションが高い『神様』の声を、ディアンは半目になりつつ聞く。その心を聡く感じ取ったのか、シルヴィアは困ったように笑った。無駄にハイテンションな『神様』の歌が続く。
『でもって小休憩ののち、2回戦&敗者復活戦を行います! 対戦表は~こちら!』
とどまることを知らない『神様』のテンション。両手をぶち上げるような声と同時に、再び天井に文字が映し出される。
2回戦 真神零人vs氷雨紫苑
「……やっと俺の出番か。待たせんじゃねぇよ」
「……」
獲物を前にした狼のような笑顔。対するは先程ディアンたちを下した氷雨紫苑。二人の視線が交錯し、風のような余韻を残す。天井の文字は潮騒に攫われるように消えてゆき、次の文字が現れた。
敗者復活戦 山吹さくらvsアリナ・イヴァノブナ・プラスコーヴィヤ
ディアン&シルヴィア組vs霧島龍牙
「あ、私たちだ」
「霧島龍牙……っと。あいつか」
自分たちに向けられる視線を、ディアンは黄色い瞳で睨み返した。眉をひそめているのは、赤と蒼のオッドアイの男。軍服姿に、宝石が埋め込まれた剣。ディアンの視線に気づき、シルヴィアは窘めるように口を開いた。
「ちょっと、そんなに睨まないでっていつも言ってるじゃん……っと、どうも」
龍牙とみられる男に会釈すると、ふっと笑みを返された。多分、彼は悪い人ではない。だが、とシルヴィアは表情を引き締めた。戦いにおいて、『天使』と『死神』、二人で一人のコンビが負けるわけにはいかない。彼女の表情の変化に気付いたのか、ディアンも一つ頷く。その黄色い瞳に宿るのは――確かな、戦意。
そんな心情の変化を知ってか知らずか、『神様』は能天気な声を響かせる。
『言い忘れたけど、このデスマッチでは情報ありの戦いは禁止とさせていただきまーす! というわけで戦闘ログは見せません☆ ご了承ください! ときに読者の皆様、他の試合が見たければ色々と検索してみると幸せになれるかもしれませんよ♪』
「……え、待って、何言って……」
『それでは第2戦&敗者復活戦! れでぃー……ふぁいつ☆』
シルヴィアの小さな呟きを残し……再び、浮遊感が身を包んだ。
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