第2話

「いやー、まさか二人が知り合いだったとは」

「本当にビックリしましたねー」

「は、はは……、そうだね」

「私もビックリしました。まさかクラスメイトが兄妹になるなんて」


 と、あれからリビングまで戻ってきて今は状況を説明している。父さんと良子さんには、僕と月見さんが同じ学校のクラスメイトということを伝えた。

 まさか彼女が僕の事を認識しているとは思わなかったが。


「周りに興味を持たない凪でも知っているんだな」

「うん、月見さんはクラスでも人気の生徒だから……」

「いえいえ、そんなことないですよ!」 


 気まずい。ものすごく気まずい。今は僕の事だったり、月見さんの事だったり、これからの事を話しているため、僕がいる意味はない。


 なので、僕は三人に一言言って、先に部屋に戻ることにした。




♡♡♡♡♡♡♡




「おはようございまーす、……えっ?!」

「あ、おはようございます、咲間さん」


 朝、眠い目を擦りながら下の階に降りると、月見さんがエプロンを着けて朝御飯を作っていた。


「もう少しで出来るので先に着替えてきてください」

「は、はい、分かりました……」


 親二人がいないことは別に珍しいこととは思わなかった。父親も朝早く家を出て、夜遅く帰ってくることはしょっちゅうあり、良子さんも同じ会社らしいのでそうなるとは思っていた。


 だが、家事などを月見さんがやるとは微塵も思っていなかった。完璧超人ということでも知られているため、家事とかも出来るんだろうなーと、誰かがクラスで話していたが本当に出来るとは思わなかった。


 俺は言われた通り、自分の部屋で制服に着替え、リビングに戻るとテーブルの上には色々な料理が出来ていた。味噌汁や卵焼きやら色々と出来ていて、ものすごく食欲がわいてきた。


「少なくて申し訳ございません」

「い、いやいやどれも美味しそうだし、作ってくれるだけで本当にありがたいから気にしないで!」

「ふふ、お気遣いありがとうございます」


 とりあえず席に着き、いただきますをしてから朝御飯を食べると、見た目どおりものすごく美味しかった。久しぶりにちゃんと朝御飯を食べたなーとも思った。


 夜更かししてしまって、ギリギリまで寝てしまい、朝御飯を食べないことが多かったのでものすごくありがたい。


 そして食べ終わり食器を片付け終わると、俺は月見さんに告げる。


「月見さん、俺達が兄妹になることは誰にも言わない方が良いと思う」

「どうしてですか?」

「そういう噂が出てきてしまうと、ものすごく厄介になる。高校生は噂とか好きそうだし」

「確かにそうですね。では誰にも言わないことにしましょう」

「協力ありがとう。そして、先に月見さんは最初にこの家を出てくれ」

「それも、噂にならないように、ですよね?」

「ああそうだ。僕はその後に出るから」

「分かりました。では戸締まりお願いします」


 行ってきますと一言告げ、家を出る月見さん。彼女が協力してくれて本当に感謝しかない。それに不利益なのはどちらかといえば月見さんの方だからな。


 僕は月見さんのことが嫌いだ。それは変わらない。色々家事をしてくれるのは本当に感謝しているし、手伝える部分は手伝いたいとも思っている。


 しかし、それと人間関係は別だ。僕も必要以上に仲良くなりたいと思っていないし、あっちもそれは変わらないだろう。

 

 仲を深める気はないと分かってもらうために、一壁築いておくことにする。そうすれば俺は傷つかず、彼女が困ることはない。


 僕は誰かに確認する事もなく、自分に戒めるように、何度も心で復唱することにした。

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