第31話・魔王様、勇者を知る。
「ーーあの、できればもう少しお供させていただけないでしょうか?」
グリーン・ボアの狩猟を達成したすぐ後、勇者であるティアがキース達に頭を下げていた。
今回ティアがキース達の狩猟に参加したのは依頼の手伝いであり、今日限りの筈だった。
しかし、獣人の子供達と一緒に訓練を受けたことが大きな刺激であり、こうしてお願いしている。
それには大きな理由がある。
実はこれまでティアが旅をしていたのは、勇者として戦い方を学ぶためだった。
強い冒険者のいる場所に出向き、教えを乞うのが目的。
だが、これまで強い冒険者に会うも戦い方を学ぶことができなかった。
その要因として、初の女勇者ということが影響している。
冒険者達は、女を“か弱いもの”として扱う傾向大きく、女の冒険者はあまり好かれないのだ。
命がけの戦場に女を連れていきたくないというのがあるのだろう。
それは勇者という立場でも同じで、これまでの勇者は全員男だったこともあり、女が勇者になったことで冒険者達は戸惑いがあるのだ。
そのため、お願いしてもちゃんとした戦い方を学ぶことがほとんどできなかった。
今回、時期外れにティアが故郷である王都に戻ってきたのも成果がほとんど得られなかったからだ。
王都はティアが生まれ育った街ということもあり、顔見知りも多く、この街の冒険者達はティアをちゃんと勇者として認めてくれている。
他の場所にいるよりもいいという判断だった。
難点は、この時期この街に強い冒険者がいないということ。
だがしかし、今回はその結論を覆すように、キースと出会った。
旅人ということで、この街の人ではないが強い冒険者だ。
そして、この街の人同様、女だから勇者だからとティアを特別扱いしなかった。
初めてまともに戦い方を学べたといえる。
この機会を逃せば、次はないという判断だ。
ーーキースは勇者であるティアがこれまで苦労していたことを知った。
能力が高い割に動きが未熟なのはそういう理由だったのだ。
キースの目的は勇者を育てることであり、ティアに戦い方を教えるのは大いに賛成だ。
むしろ、勇者の方からお願いされるとは思っていなかった。
「・・・俺達がこの街にいる間だけなら構わない」
ただ、ずっと旅を共にすることはできないため、そういう条件を付けた。
戦い方を教えることはできても、仲間になることができないからだ。
キース達が魔族であるということが理由の一つだが、もう一つ無理な理由がある。
勇者の仲間になることで受けられる恩恵を受けられないということ。
それは人間でなければ使えず、それが知られれば正体がバレることになる。
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