第30話・魔王様、レクチャーする。
「――僕達にもできますか?」
すると今のキースの動きを見ていたであろう獣人の子供達が駆け寄ってきてそう言った。
キースと同じ、剣を持っている男の子2人だ。
「あぁ、動きを覚えれば誰でもできるはずだ」
誰でもできるとはいうが、もちろん練習は必要である。
回避する距離やタイミング、回避後の動作を覚えなければならない。
「教えてください!」
子供達は戦闘知識を身につけたいようで、そう言ってきた。
キースにとって断る理由もないので、承諾する。
「お姉さんもやりましょう!」
その際、子供達は座り込むティアにも進めていた。
「・・・そうですね、勇者である私が負けてられませんよね!」
子供達のやる気を見せられたことで、怯えていた姿から一変して、力強く立ち上がった。
完全に克服できたわけではないと思うが、前に進もうとする意志があるだけいい傾向だ。
――それからというのも、ティアと獣人の子供達に動きをレクチャーしていく。
剣を持つ男の子以外にも槍を持つ男の子、弓を持つ女の子にもそれぞれ動き方を教えた。
ベルもキース同様に戦闘知識が豊富なので、教える側に参加。
合間を見ては、シャルも技を披露していた。
その時わかったのだが、シャルは魔法以外にも格闘戦もできるようで、影魔法で両手に鋭くて長い爪を作り出し戦っていた。
小柄なことを活かした俊敏な立ち回りだ。
――訓練を含んだ狩猟を始め、あっという間に時間が経っている。
討伐数もそれなりに集まったことで、ラスト1頭討伐して街に戻ることになった。
ラスト1頭は勇者であるティアが相手をすることになっており、訓練の成果を見せる。
一対一で向き合っても、最初の時のように怯えた姿はしていない。
しっかりとした構えだ。
最初同様、敵意を感じたグリーン・ボアがティアに向かって突進していく。
キースが見せた動きは剣が届くギリギリの範囲まで引き付ける必要があり、恐怖心を抱いたままでは無理な立ち回りだ。
だけど、今のティアはそんな感情を見せず、ギリギリまで引き付け、軽やかに回避する。
そして、回避の振り向き様に剣で胴体を切り裂いた。
ブヒィィィィィッ
しかし、それだけの攻撃ではまだ致命的なダメージにはならなかったようで倒れなかった。
でも、動きが鈍くなっていて隙だらけ。
ティアは急いで追撃を仕掛けて、なんとか1人で討伐した。
「悪くない動きだった」
動き方を教えたキースはティアの動きを見て、そう判断する。
1日訓練しただけで、ここまで身につけたのはすごいことだ。
「いえ、まだまだです・・・」
しかし、ティアは今の動きに納得していなかった。
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