第27話・魔王様、勇者と狩猟する。

「――そこで、頼みがあります。

冒険者ギルドから依頼が出されたことを聞きました。

どうか私も同行させていただけないでしょうか?」



そう言って勇者こと――ティアが狩猟の同行を頼み込んできたのだった。



――そして現在、日付も変わって次の日の朝を迎えている。



昨日の依頼を受けるためにキース達は冒険者ギルドへとやってきていた。



「お、あれが噂のルーキーだぜ。

たった3人で冒険者10人でもクリアできない依頼を達成したらしいぜ」



するとキース達の昨日の出来事が冒険者達にも広まっているようで、噂になっていた。



「だが、今回は人数が多いみたいだな。

相変わらずの女、子供が多いが・・・」



今回、キース達3人の他に獣人の子供が7人加わっており、結構な大所帯になっている。



「――ようこそ、冒険者ギルドへ。

ご用件は何でしょうか?」



キース達はその噂を気にせず、受付へと足を運ぶとすぐに対応してくれる。



「依頼を受けにきた」



「かしこまりました、少々お待ちください」



キースが依頼のことを伝えると話は伝わっていたようで、すぐに内部へと連絡していた。



――キース達が依頼の承諾が済むのを待っていると、冒険者ギルド内に僅かなざわめきが起こる。



「あれ、勇者じゃないか?」



「うそだろ?」



すると、先程キース達の噂をしていた冒険者が気づいたようだ。



その原因になっているのは、目立つ白い鎧に白い剣を装備したティアだった。



勇者の登場に冒険者達が驚いている様子だった。



「――お待たせしました。

今日はよろしくお願いします」



ティアはキース達の所に行くとお辞儀する。



そう、あの後、勇者の頼みを聞き入れていて、狩猟に同行するにあたって、この冒険者ギルドで待ち合わせしていたのだ。



「よろしくな」



キースがそう答えるとまた冒険者ギルドにざわめきが起きる。



「勇者もあのルーキー達に加わるのか・・・」



「勇者まで狩猟に出るんだな・・・」



冒険者達には驚きの連発だっただろう。



キース達のメンバーが全員揃ったところで、依頼の承諾が終わったようで受付の人から許可証を受け取ることができた。



「いこうか」



その言葉で、キース達11人は狩猟に出かけるのだった。



――狩猟地である草原地帯に着いて早々、5頭のグリーン・ボアの群れが見つかった。



早速、勇者と獣人の子供達7人、シャルとで分散する。



「・・・3頭はやる・・・2頭はまかせた・・・」



シャルがそう言うと一目散にグリーン・ボアの方に行き、すぐに3頭を誘導していった。



残った2頭は、勇者と獣人の子供達に気づいており、視線を向けたまま臨戦態勢に入っている。



シャルの狩りは昨日のことで見守る必要なく、すぐに終わることがわかっているので、キースとベルは勇者と獣人の子供達の様子を見守っていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る