第26話・魔王様、罠を張る。

「――キース様、本当によろしいのですか?」



グリーン・ボアの狩猟に獣人の子供達の同行を認めた広場の帰り道、ベルがそうキースに聞く。



「どういうことだ?」



「『獣人狩り』の存在でございます」



ベルは『獣人狩り』の連中に狙われている獣人の子供達を街の外に出すことを心配していた。



「十中八九、見つかったら襲ってくるだろうな」



「でしたら・・・」



キースは『獣人狩り』が子供達を探しにくるとわかっていながら同行を認めたのだ。



「『獣人狩り』の規模は大きい。

闇雲に探しても時間が掛かるだけ、それなら逆に向こうからきてもらう」



それは、あえて子供達を街から出すことで、『獣人狩り』をあぶりだす作戦なのだ。



「――それに俺達の側にいる方が安全だろ?」



もし仮にキース達が街から離れているときに襲撃を受けてしまったら対処できなくなる。



それなら常に一緒に行動することで安全確保できるわけだ。



「そういうことでしたか・・・かしこまりました。

誠心誠意お守りいたします」



「頼む」



ベルはキースの説明で納得したようだった。



――そして、広場から屋台の方に戻ると、誰かと話すローナの姿があった。



「お、帰ってきたみたいだね」



ローナが戻ってきたキース達を見つけると一度話をやめ、迎え入れてくる。



様子から察するにキース達を待っていたようにみえた。



「紹介するはね――」



「――初めまして、旅人さん。

私の名前は、ティアと申します」



ローナが話を切り出すと、話していた相手――【ティア・ミス】がキース達に向け自己紹介をした。



まだ少し幼い顔立ちで青い瞳、白に近い銀色の長い髪をした、見覚えのある少女だった。



「・・・勇者と知り合いだったんだな」



そう、その少女は昨日壇上で演説を行なっていた勇者である。



2人が話している雰囲気は初対面ではなく、馴染みある感じに思えた。



「そうそう、ティアとは勇者に任命される前からの付き合いでね。

――それで、あなた達に用があるそうよ」



ローナは勇者こと――ティアと昔馴染みだった。



それで、用があるキース達も、たまたまローナと知り合っており、ここに訪れたそうだ。



「用?」



ローナの話を聞いて、キースはティアに問う。



「はい、噂を聞きました。

今日この街の狩猟難(しゅりょうなん)を救っていただいたようで、ありがとうございます」



そう言って突然頭を下げる。



ティアが言っているのはグリーン・ボアの狩猟のことだ。



冒険者ギルドに大量に納品したのが街の救いになっていたようだ。



「――不甲斐ないことに勇者である私が事情を知らず、狩りに出ることができなくて申し訳ないです」



ティアは勇者として責任を感じており、手助けできなかったことを悔やんでいる様子だった。



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