第25話・魔王様、認める。
「――じゃあ・・・始めるよ・・・」
キースが渡した元勇者達の武器を装備した獣人の子供達7人とシャルが広場の中央で向かい合って立つ。
「・・・おいで・・・影達・・・」
シャルが合図をすると影を操り、シャドー・ウルフの分身を生み出した。
今回シャルが生み出したのはシャドー・ウルフ一匹だけ。
ただ、これまでのシャドー・ウルフと違い、少し大きい。
「グリーン・ボアのサイズを再現したようだな」
キースが言うように、シャルが生み出したシャドー・ウルフはグリーン・ボアの体格を再現していた。
子供達はグリーン・ボアを狩ったことがないと言っていたのを考慮したのだろう。
「・・・この子は分身・・・いくら傷つけても・・・平気・・・。
・・・本気できて・・・」
シャルは子供達の正確な実力を見るため、そう言った。
「わかりました」
子供達はそれぞれ武器を構え、シャドー・ウルフに向けて走り出した。
7人それぞれ武器が違う。
剣を持つ男の子が2人、槍を持つ男の子が2人、弓を持つ女の子が3人だ。
「・・・ほう、動きは悪くないな」
経験があるだけあって、死角をうまく捉えている。
「やぁ!」
シャドー・ウルフの動きに合わせて剣で切りつけ、隙を見ては槍で突き刺している。
弓もうまく命中させているようだ。
「・・・やるね・・・これならどうかな・・・」
子供達の動きを見たシャルがシャドー・ウルフの動きを変える。
動く的(まと)になっていたシャドー・ウルフが回避行動をするようになった。
「うわっ!」
すると子供達の動きがバラバラになっていく。
「連携が取れていないようだな」
離れた所で見ているキースには全体の様子がわかっていた。
子供達は個人で狩りを行なうことがあっても、協力して狩りをすることがなかったようだ。
「・・・もういいぞ」
その様子を見て、キースが止めの合図を出した。
途端に疲れた様子で子供達が地面に座り込んだ。
「強い・・・」
シャドー・ウルフの動きが変わってから全く歯が立たないでいた。
「・・・どう?・・・ご主人様・・・」
するとシャルが心配そうに子供達のことを聞いてくる。
「同行してもいいだろう。
少し連携を覚える必要はあるが、おいおい慣れていくはずだ」
キースは動きの良さを評価してそう答えた。
自身を守る力は十分備わっていると判断できる。
最後、動きがバラバラになったが、あれはシャドー・ウルフの動きであって、グリーン・ボアにはあんな回避するような動きはできない。
多少連携が取れるようになれば十分狩りを行なえる。
「・・・よかった!・・・」
キースの同意を聞いて、真っ先にシャルが喜んでいた。
実はシャルが一番子供達と狩りに出たかったのかもしれない。
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