第23話・魔王様、依頼を受ける。

――それからしばらく経ち、無事ギルドへの報告を終え、宿屋に戻る。



すると、早速解体を終えたグリーン・ボアの肉がローナの元に届けられたようで、屋台を開店させていた。



「あなた達、帰ってきたんだね。

話は聞いたよ、本当に大量のグリーン・ボアを狩猟していたんだね」



キース達が戻ってきたのを見て、嬉しそうにローナが話す。



肉を届けられた際に事情を聴いたのだろう。



「もう肉が届けられたんだな」



「そうなのよ、居ても立っても居られない早速開店させたわ。

ありがとうね」



ローナが屋台で必死で肉を焼く中、周りにはシャルを中心に獣人の子供達7人もいて、皆、出来立ての串焼きを食べていた。



「これ美味しい!」



ローナが作った串焼きは獣人達の口にもあったようで、美味しそうに食べていた。



「・・・ローナの串焼き・・・絶品・・・」



シャルが「美味しいのは当たり前」というように呟き、人一倍肉を平らげていた。



「少しシャルに話があるのだが、いいか?」



「・・・ん?・・・」



そんなシャルの手が止まった隙を見て、キースが話を切り出す。



「ギルドからの依頼で、明日もグリーン・ボアの狩猟に出てほしいそうだ。

どうする?」



実は帰り際に、キース達に冒険者ギルドからそんな依頼が出された。



誰もがグリーン・ボアの狩猟に行くのを拒み、狩猟に出れる冒険者がいない。



そこで、実績も今日の狩猟数で証明されたキース達が頼みの綱としてお願いされたのだ。



今日の狩猟の成果で数日はもつと言われたが、狩猟に復帰するのがいつになるかわからない今、貯蔵しておきたいのだろう。



「・・・ん・・・行く!・・・肉が無くなるの・・・困る・・・」



依頼の話をするとすぐにシャルが承諾した。



今日の狩猟もシャルが言い出したことで、肉に執着しているところから断らないとは思っていた。



「――あの・・・僕達も連れていってもらえませんか?」



すると、獣人の1人が改まってキース達にそう言った。



その子は獣人達のリーダーをしている男の子であり、その子の意見にはみんな賛同しているように頷いている。



「・・・急に・・・どうしたの?・・・」



その発言にシャルが驚いたように聞く。



「シャルお姉ちゃん達は、見ず知らずの僕達を助けてくれて、こんなに良くしてくれるから何かお手伝いできることないかなって・・・」



シャルはすっかり獣人の子供達に馴染んでいるようで、姉のように慕っているみたいだ。



それに恩を感じて、シャルを獣人だと思っているその子達は、「自分達にも何かできることはないか」と考え、こうして話しているのだろう。

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