第22話・魔王様、問題を解決する。
「――あんた達がこれ全部狩ったのかい?」
受付の人の報告を受けて駆けつけてきた解体屋のお姉さんの一言がそれだった。
今はギルドの奥にある解体施設に来ており、そこで『アイテム・ボックス』に収納していたグリーン・ボア30頭を出している。
「そうだ」
正確にはシャル1人で全部狩ったのだがそれは黙っておく。
「あんた達2人でこの量を狩ったのかい、凄いわね」
「いや、狩りに出たのは3人だ」
この場にシャルがいないことからキースとベルの2人だけだと思われたようだ。
「たった3人で・・・。
この量は並みの冒険者が10人いても1日がかりで狩れるかどうかだよ」
キース達が狩りに出たのはほんの2、3時間前のことであり、それだけの時間で達成したことになる。
普通の冒険者ではまずありえない。
受付の人が驚いていたのはそういうことだったのだ。
シャルの力はそれほどまでに比べ物にならないということだ。
「――それより、早く解体を頼む。
グリーン・ボアを狩る者がいなくて肉に困っていたのだろ?」
変に詮索される前に話題を変えようと本題に入ることにした。
「そうだね、これだけあれば数日はもつ。
状態もいいし、いい額になるよ」
解体屋のお姉さんは並べられたグリーン・ボアを確認してそう言った。
「お金はいらないから、串焼きの屋台をしているローナという人の所に優先的に肉を送ってもらえるか?」
「あんた達、ローナの知り合いなのかい?」
キースがローナの話をすると解体屋のお姉さんも知っている様子だった。
「昨日から宿屋でお世話になっている」
「なるほどな、わかった。
そういうことなら超特急で終わらせるから待ってな!」
解体屋のお姉さんがそう言って手を動かし始めるとその言葉通り、すごい勢いで解体していく。
「すごいですね」
ベルが感心するように、慣れた手つきで無駄のない動き。
このペースならたくさんあるグリーン・ボアもすぐに終わる。
「――終わったよ」
ものの数時間で全てのグリーン・ボアの解体を終わらせた。
数が数だけに解体屋のお姉さんの姿はボロボロになっていた。
「すまないな」
「いや、これが私の仕事だから気にするな。
それより、ローナの店に優先するのはわかったが本当にお金いらないのかい?
かなりの額になるはずだが・・・」
「お金に困っていないから必要ないな」
キースにはまだまだ使い切れないようなお金があるため、これ以上必要ない。
「ならせめて、ローナの店だけタダで肉を提供するっていうのはどうだ?」
キースが報酬を拒んだことで、解体屋のお姉さんがそう提案してくる。
「それは助かるが、いいのか?」
「何を言う、それでもまだ払い足りないぐらいだ」
キース達にとってその提案はありがたく、ゲラゲラ笑う解体屋のお姉さんの提案を受けることにした。
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