第21話・魔王様、冷静。

「――入荷の目処が立たなくなった・・・」



実はあの後、勇者が襲われた際に、冒険者ギルドから捜索隊が派遣できなかったことが広まったのだ。



それにより、もし襲われた時、救助が来ないのではないかという噂が拡大してしまった。



結果、強い冒険者が街に戻ってくるまでは狩りに出ないという話が上がる。



それでは狩りを宛に街で商売している者は困ることになる。



ローナがその内の1人だった。



そんな状況で、キース達が連れてきた獣人の子供を7人も匿うことは無理だった。



「――心配いらない」



困ったように話すローナをよそに、キースはそう言い切った。



「その子達の宿代は出してもいい。

それに、グリーン・ボアの肉の入荷も問題なく行えるはず――」



キースはシャルに狩りの成果を聞くように目配りする。



「・・・うん・・・たくさん狩った・・・」



シャルも成果には自信があるようだ。



「そうなのかい?」



「これから冒険者ギルドに報告に行くから待っていてくれ」



キース達はローナに獣人の子供達を一度預けて、冒険者ギルドに行くことにした。



念のため、シャルには子供達と残ってもらい、渡していた『アイテム・ボックス』の指輪を預かった。



――冒険者ギルドまでの道中、キースとベルは考えていた。



「やはり【獣人狩り】という集団を放ってはおけませんね」



「そうだな、まさか人間同士で争いが起きているとは思わなかった」



魔族の2人にとって、信じがたい光景だ。



勇者を育成する前に解決しなければいけない案件でもある。



“勇者の力の源”に関係あることだからだ。



これまで勇者が弱かった理由も関係しているように思えた。



――2人が話ながら歩いていると冒険者ギルドへと着いた。



すると、冒険者達でギルド内がごった返しているのがわかる。



狩猟にいけない冒険者達が集まっているのだろう。



キースはそんな中、誰もいない受付へと足を運ぶ。



「・・・ご用件はなんでしょうか?」



するとすぐに受付の人が声をかけてくる。



「グリーン・ボアの狩猟報告にきた」



「かしこまりました。

何頭の討伐でしょうか?」



受付の人の質問で、キースはシャルから受けとった『アイテム・ボックス』の中を確認する。



「“30頭”」



「・・・え?」



キースの言葉に受付の人が驚いたように固まる。



「どうした?」



「・・・いえ、本当にそんな数を?」



なぜか疑うように聞いてくる。



「あぁ、全てこの中に入っている」



疑われる意味がわからず、キースは『アイテム・ボックス』である指輪を受付の人に渡した。



「・・・『アイテム・ボックス』持ち・・・しかも本当に30頭・・・。

――も、申し訳ありません、すぐに解体屋を呼びますので少々お待ちください」



中身を確認した受付の人は急に血相を変え、慌ただしく内部へと報告を始めた。



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