第20話・魔王様、獣人を知る。
――それからしばらく経ち、キース達は王都へと帰還していた。
シャルのおかげで説得ができて、7人の獣人の子供達を引き連れている。
「あなた達、無事帰ってきたみたいね。
――ん?その子達は?」
昨日泊まった宿屋までくると、ちょうどローナが宿屋から出てきていた。
キース達を見つけ、そして後ろにいる獣人の子供達を見てそう言ってくる。
キースはローナに事の発端と出来事を全て伝えた。
「あなた達、中に入りな!」
話を聞いて、ローナがすぐに宿屋に入るように指示してくる。
ローナの焦った表情を見るに人前では言えない話があるのだろうと思えた。
――ローナの指示通り宿屋に入り、全員が食堂のテーブル席につく。
「・・・その子達を襲ったのは、【獣人狩り(じゅうじんがり)】の連中だ・・・」
すると、すぐにローナが外で話せなかった話を切り出した。
ローナは獣人を襲っていた男達のことを知っている様子だった。
「・・・この街ではあまり聞かないけど、【獣人狩り】という獣人だけを襲う集団がいるんだよ・・・――」
ローナが言うには、獣人の村を襲っていた男達は【獣人狩り】という集団らしい。
その集団は、獣人の持つ獣耳やしっぽといった特徴を“魔物の生まれ変わり”と嫌い、獣人を同じ人間として思っていない人々の集まりのようだ。
彼らの考えでは獣人も魔物同様に、狩猟していい存在として獣人を襲っている。
中には、キースが聞いたように獣人を奴隷として売っている奴もいるそうだ。
「・・・ひどいな」
話を聞いてそう呟くように、獣人達には何の罪もないにも関わらず、人間的特徴が違うというだけで差別的に襲われていることになる。
「この街には、そういう差別意識はあまりないんだけど、他の国や街は違ってね・・・」
他の国や街ではその集団のように獣人を嫌う人々が多く、その集団を支持する声もあるらしい。
そのため、その活動を止められず、うやむやになっているそうだ。
「――ここで匿ってもらえるか?」
【獣人狩り】という集団がまだいるとわかった以上、一度狙われたこの子達は危ないだろうと思えた。
そこで当初の予定通り、ローナに獣人の子供達のことをお願いする。
「あぁ、うちの宿屋でよかったら使いな・・・――と言いたい所だけど、問題があってね・・・」
ローナが承諾してくれそうだったが、すぐに困ったように顔をゆがめた。
「――あなた達、昨日の夜のことは覚えているだろう?」
それはローナの屋台で使うグリーン・ボアの肉が入荷できないという話だ。
原因は狩猟に出る者が強い魔物を恐れて、狩猟にいけないことにある。
実は、キース達が出かけた後、更なる進展があった。
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