第19話・魔王様、獣人を救う。

ガサガサッ



村を襲っていた男達が居なくなったことで、身を隠していた獣人達が次々に姿を見せる。



「・・・僕達の村が・・・」



村の有り様を見て、獣人の1人が悲しそうに呟く。



それにつられて泣く子も現れる。



皆、まだ幼い獣人達であり、大人が1人もいない。



「――君達の親はどこに?」



悲しみに暮れる獣人の子供達にキースはそう質問する。



「皆、さっきみたいな男達に連れ去られました・・・」



「そうか・・・」



キースの質問には1人の獣人の男の子が答えてくれた。



予想はできていたが、あの男達が獣人を襲ったのはこれが初めてではなく、何度も訪れていたのだろう。



それで度々、獣人を攫ったのだと考えられた。



「――君達はこれからどうする?」



村が焼かれ、これから生活していくのに子供達だけでは厳しいのではないかと思えた。



「わかりません・・・一体どうすれば・・・」



先程からキースの質問に答えてくれているのが、今のこの獣人達のリーダーを務めている子なのだろう。



途方に暮れた様子で俯く。



「どうしましょう、キース様・・・」



関わってしまった以上はこのままにしておくわけにはいかないだろう。



それにまたいつどこで、先程の男達のような連中が現れるかもわからない。



このままでは“勇者の力が弱まる”ばかりになってしまう。



「とりあえずはローナに相談してみよう。

あの場所なら匿ってもらえるかもしれない」



獣人と人の間には何かあるとは思うが、シャルに対しても偏見がなかったローナならきっと大丈夫と思えた。



子供達の人数は7人ほどで、あの宿屋なら泊まれるだろう。



『――ご主人様・・・終わったよ・・・』



するとちょうどいいタイミングで、シャルからグリーン・ボアの狩猟が終わったと報告が入る。



『ちょうどよかった。

少しこっちにきてもらえるか?』



『・・・わかった・・・』



キースはシャルをこの場に呼ぶことで、獣人達を人里に連れていくことを説得してもらおうと考えたのだ。



シャルの外見は獣人であり、人の姿をしたキース達の説得では警戒するかもしれないと思えたからだ。



――その会話からすぐのこと、キースの影がぶわっと広がったと思うとその中からシャルが姿を現す。



「・・・どうしたの?・・・」



シャルはグリーン・ボアの狩猟に夢中で、キース達の出来事を見ていなかったように、そう答える。



キース達はこれまでのこと、これからやってもらうことをシャルに説明した。



「――わかった・・・まかせて・・・」



説明後すぐにシャルは納得して、焼けた村をずっと見つめる獣人達の元へと向かった。



最初は突然現れたシャルの存在に驚いている様子だったが、その似た外見ですぐに上手く打ち解けているようだった。



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