第18話・魔王様、圧勝する。

「ーー魔族とはいえ、相手は2人、それに1人は女だ。

数で押せば何とかなるはずだ」



男達は人数差を逆手にキース達とやり合おうと考えたようだ。



「いえ、あなた方のお相手は私1人でございます」



それに対してベルが大きく翼を広げて威圧する。



「ぐっ・・・」



その威圧だけでも男達はわずかに怯む。



ーー『ブラッド・アイテム』



その間にベルは魔法を唱え、手から全体真っ赤に染まった剣を作り出し、握る。



「では、まいります」



その瞬間、目にも留まらぬ早さで男達に接近し、真っ赤な剣で切り刻んでいく。



「うわぁぁぁぁぁ」



ーーそれは圧倒的で、あっという間の出来事だった。



20人もいた男達は、何もできないまま全員、ベル1人の手により倒されたのだ。



「やはり所詮は人間。

大したことありませんね」



ベルはすごい速度で移動したにも関わらず息一つ切らしていない。



「見事だ、ベル」



ベルの手際の良さにキースは褒める。



「この程度で、もったいなきお言葉。

ーーそれより、キース様。

この者達をいただいてもよろしいでしょうか?」



するとベルが珍しく、死体となった男達が欲しいと強請ってくる。



「ん?ベルの手柄だ、好きにするとよい」



「ありがとうございます。

ーーお前達、立て!」



キースが許可すると、死体であるはずの男達に向かって命令を出す。



すると、ベルの命令に従うように、死んでいるはずの男達が次々に起き上っていく。



ーーベルが使った『ブラッド・アイテム』という魔法は、血を操り、固めた血で武器を作り出す魔法。



ベルはヴァンパイア族の魔族であり、ヴァンパイアの血は体内に入るとどんな種族でもヴァンパイアの眷属(けんぞく)に変えてしまう。



そのため、その武器で切られた者は切り口から血を混ぜ、ヴァンパイアの眷属にしていく。



男達が死体になっても動いているのはヴァンパイアの力によるものだった。



「ちょうど私達、ヴァンパイア族は血に飢えていまして、手頃な眷属が欲しかったのです」



ベルが強請った理由は、ヴァンパイア族の血の補給源が欲しかったという事だった。



「なるほど。

では、この者達をヴァンパイア族の領土へと送ろう」



そう言うとキースが男達の足元に魔法陣を展開させる。



ーー『ワープ』



魔法を発動させると、男達は魔法陣と一緒に消えるように姿を消した。



一瞬で転移魔法を展開させ、別の場所へと移動させたのだ。



「ありがとうございます、キース様」



「かまわない。

ーーそれよりも村の様子だな」



先程の男達が獣人を襲うために村に火を放ったようで、ほとんどの家が燃えて崩れ落ちている。



「これは酷いな・・・」



村はもう住めるような状態ではなかった。



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