第17話・魔王様、村を見つける。

「キース様、どちらに向かわれますか?」



キースとベルは地面が見渡せる程の上空で停止していた。



キースは足元に展開された魔法陣の上、ベルは背中から生えた翼を器用に使い止まっている。



「そうだな・・・」



辺りをグルっと一面見渡す。



「――あれはなんだ?」



するとキースが視線を向けた先では、森が生い茂った間にひっそりと建つ小さな村があった。



そこからモクモクと煙が上がっている。



「あれは・・・村が襲われているようですね」



その村は獣人が暮らしていた村のようで、逃げ惑う獣人とそれを襲う武装した人間達の集団が見えた。



「なぜ“同じ人間同士”で争いあっているんだ」



「さぁ、わかりません」



魔族達からすると、獣人も人も“同じ人間”。



人間同士が争いあっていることにキース達は理由がわからないでいた。



「・・・少し話を聞いてみるか」



「かしこまりました」



理由が気になった2人は襲われている村へと向かうことにした。



「――なんだお前達は!?」



2人が空から村の近くへと降り立つと、すぐに村を襲っている武装した人間達が駆けつけてきた。



数はおよそ20人ほどで、誰しもがガラの悪い男達だった。



「なぜこの村を襲っている?」



キースは相手の質問を無視して、逆に質問する。



「はぁ?獣人の村を襲って何が悪い」



男は何の悪気もないようにそう答えた。



「なぜ同じ人間なのに争いあうんだ?」



「あぁ!?獣人と俺達を一緒にするんじゃねぇよ。

獣人は奴隷(どれい)で俺達は違う」



男の言い分では、獣人と人の間には大きな溝のようなものがあると感じられる。



王都で会ったローナは獣人の見た目をしたシャルに対しても特に変わった様子がなかったので不思議でもある。



「――アニキ!この女の背中にコウモリの翼が・・・」



すると話していた男とは別の男があることに気づく。



キース達は地上に降り立ったばかりで、翼で飛んでいたベルはまだ翼を隠せていなかったのだ。



「なっ!その見た目、魔族か!?」



話していた男はキース達の正体に気づいたようで、慌てだす。



「キース様、いかがなさいますか?」



ベルは正体がバレたことで、キースに判断を仰ぐ。



タイミングが悪かったとはいえ、ここで魔族とバレるのは今後の計画に支障が出かねない。



更に、男達の慌てようから察するにこれ以上話を聞くのも難しいだろう。



「そうだな・・・人間同士で争いあうほど無意味なものはない。

争いを起こす連中は排除しても問題ないだろう」



キースは口封じのためと、人間同士の争いが勇者育成の妨げになると判断し、この集団を壊滅させると決めた。



「かしこまりました、キース様。

ここは私におまかせください」



すると、ベルが進んで男達の前に立った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る