第16話・魔王様、アイテムを使う。

「それは?」



「・・・確か人間界では、『アイテムボックス』という名前だったか」



キースが取り出したそのアイテムは、魔界ではほとんど使用することがなかった収納魔法。



それを取り込んだ指輪だった。



魔力を指輪に流し込むことでパッと光を放ち、その光を収納したいものに当てるだけで収納してしまう優れものだった。



「――実際に使ってみよう」



キースは試しに先程倒したグリーン・ボアを収納してみる。



指輪から発せられた光をグリーン・ボアに当てると全体図をスキャンするように光が包み込んでいく。



それが終わればパッと消えるようにグリーン・ボアの姿がなくなった。



「・・・消えましたね」



「これで収納完了だ」



消えたグリーン・ボアは別空間の収納スペースへと収納されている。



そのため、手間も重さも感じることなく持ち運ぶことができる。



この『アイテムボックス』の良さは他にもあり、その空間には時間という概念がなく、取り込んだ瞬間の状態を常に維持し続けることができるのだ。



「・・・すごい!・・・」



キース達が魔法を使っているのを見て、シャルもすぐに駆け付けていた。



「やってみるか?」



「・・・いいの?・・・」



キースはシャルにその収納魔法の指輪を渡してみる。



誰でも使えるようには作ってはいるが、実際やってみないことには分からない。



「――できた・・・」



シャルが他の倒したグリーン・ボアの元に行き、指輪を使ってみると見事にグリーン・ボアの姿が消えた。



「大丈夫のようだな」



しっかり魔法が発動したのを確認してキースが頷く。



――そのままシャルが倒したグリーン・ボアを次々に収納していくのを見つつ、全て収納できたところでキースがシャルを呼んだ。



「その指輪はシャルに預けておく。

――これから俺達とは別行動になるが、平気だな?」



シャルの戦闘と収納アイテムの使用で、1人でも問題ないと判断し、キースとベルはシャルと別行動することにした。



目的は王都周辺の偵察である。



「・・・うん!・・・大丈夫!・・・」



シャルも1人でグリーン・ボアの狩猟をするつもりだったようで、すぐに納得した。



「何かあれば言ってくれ、すぐに駆け付ける」



この辺りにシャルと対等に戦えるものはいないと思うが、念のためそう言っておく。



使い魔契約の特性があるからお互い何かあればすぐにわかるし、連絡も見えないテレパシーのようなものですぐに伝えられる。



「・・・うん!・・・グリーン・ボア・・・たくさん狩る・・・」



シャルもやる気満々のようで平気そうだ。



「――では、俺たちは行く」



「シャル様、お気をつけて」



キースとベルは一旦シャルに別れを告げ、はるか上空へと舞い上がった。



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