第15話・魔王様、狩猟する。

「・・・グリーン・ボア・・・いっぱい・・・」



話ながら歩いていると、すぐにグリーン・ボアのいる草原地帯にやってきていた。



誰も狩る者がいないように、着いて早々に集団で行動しているグリーン・ボアの群れを発見する。



数は5頭。



普通の冒険者ならまず分断させてから1頭ずつ狩猟していくものだが、シャルにはその必要がない。



「・・・おいで・・・影達・・・」



シャルが一度パンっと手を叩き、呼びかける。



するとシャルの足元に合った影が、ぶわっと広がり、5匹のシャドー・ウルフの分身を呼び出した。



1頭に対して、1匹ずつで対処していく予定なのだ。



「・・・行っておいで・・・」



シャルが命令を出すと影を伝い、それぞれ別のグリーン・ボアの元へ向かう。



全員がグリーン・ボアの影に潜んだら準備完了。



「・・・いくよ・・・『シャドー・バインド』」



シャルが魔法を放つと5頭のグリーン・ボアが一斉に影によって拘束された。



ブヒィィィィィッ



グリーン・ボア達は何が起きたのか分からない様子で、雄叫びを上げ暴れようともがいている。



だけど全く動けないでいるようだ。



――『シャドー・バインド』というのは影魔法の1つ。



影をその場に固定することで、その影の持ち主もまた動くことができなくなる拘束魔法。



キラー・タイガーから勇者を救った時もこの魔法を使用していた。



「・・・これで終わり・・・『シャドー・バイト』」



拘束してしまえば、後は動かない的(まと)と同じで、すぐにとどめの魔法を放つ。



影から一斉に飛び出したシャドー・ウルフが鋭い牙を見せ、グリーン・ボアの弱点へと的確に食らいついていく。



――『シャドー・バイト』はシャドー・ウルフの固有魔法の1つ。



影に潜めるシャドー・ウルフだからできる牙を使った奇襲攻撃。



ブヒィィィィィッ・・・



グリーン・ボア達は拘束されて動けないまま、弱点に攻撃を受けて倒れるように絶命した。



「――見事だ」



「シャル様、凄いです」



その光景を見ていたキースとベルは素直に褒める。



5頭のグリーン・ボアを一斉に拘束し、的確に弱点を狙っているのは、スキのないいい動きだった。



シャドー・ウルフの分身を使っているとはいえ、指示をしているのはシャル本人。



5匹それぞれの動きを1人で管理するのは大変であり、至難の業だ。



「・・・えへへ・・・もっと狩る・・・」



シャルは2人に褒められて嬉しそうに笑い、まだまだ余裕という表情で更に獲物を探していた。



「――倒した魔物はどうしましょうか?」



ベルが問うように、たくさん魔物を狩るのはいいが持ち帰る方法に困ってしまう。



「コレを使おう」



そこで、キースが指輪状のアイテムを取り出した。



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