第14話・魔王様、冒険者になる。
――それから時間が経ち、次の日の朝を迎えている。
昨日の話通り、早速キース達はグリーン・ボアの狩猟を行なうために、冒険者ギルドにやってきていた。
本来、魔物を狩猟するには、冒険者ギルドの許可が必要になるのだ。
「――申し訳ございません。
今日は狩猟に出る冒険者が少なく、とても助かるのですが、お子様お一人では許可することができません」
シャルがギルドの許可を貰いに受付に行くと、門前払いされてしまう。
「・・・むぅ・・・ダメなの?・・・」
シャルの見た目が子供だということで、許可できないようだ。
「――では、俺達が同行するということではどうだろうか?」
「・・・ご主人様?・・・」
それを見兼ねて、キースが提案する。
実際シャル1人でも余裕なのだが、狩猟の許可が出ないようなので、仕方なく代わりに行なう。
「・・・それでしたら大丈夫です。
冒険者申請を行ないますので、少々お待ちください」
キースの提案にはすぐに許可が下りた。
――それから少し経ち、キース達は冒険者申請が無事済んだことで、グリーン・ボアの狩猟に向かっている。
「・・・不思議なものだ」
その道中、冒険者ギルドで手渡された許可証であるカードを見つめながらキースが呟く。
「どうしました、キース様?」
呟きにいち早く気づいたのはベルであり、様子を窺うように聞いてくる。
「・・・なぜ人間は外見だけで判断するのだろうか」
それは先程の冒険者ギルドでの出来事である。
シャルの見た目は子供ではあるが、実力では冒険者の力を優に超えている。
仮にギルドにいた冒険者が束になってかかっても勝てないだろう。
「・・・るんるんっ・・・」
今はさっきの出来事を忘れて嬉しそうに歩いているシャルだが、一つ間違えればギルドが無くなってもおかしくはなかった。
「――やはり人間達には、まだ魔力を見る力が貧しいのでしょうか」
ベルはそう解釈する。
人間に魔力を見る力がないのは知っている。
そこで今から数百年前に、魔王であるキースは自らの力である『魔眼(まがん)』の効果を水晶に取り込み、人間界へと送ったことがある。
人間の魔力でも発動できるように工夫しており、量産可能なように人間界のモノで生み出した。
魔力を計測することで、効率よく魔力を高めて強くなってもらう計画だった。
だが、今の様子では、それが人々の手に行き渡っていないことがわかる。
――実はそのアイテムには『魔力水晶(まりょくすいしょう)』という名がつけられ、簡単に魔力量がわかることから、高級品として出回っている。
そのため一部の者しか所持しておらず、キースの考えていた計画のようにはいかなかったのだ。
人間と魔族の価値観の違いでもあっただろう。
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