第13話・魔王様、目的が決まる。

「シャル様、あまり我儘を言ってはダメですよ」



シャルのグリーン・ボアを狩猟するという宣言を聞き、すぐにベルが反対をする。



今回の行動に関しては、メリットがない。



シャルの食べたい串焼きが手に入るというだけ。



ベルにはそれがどうしてもシャルの我儘に思えたのだ。



「――いや、ベルよ。

シャルの言う通り、明日は狩猟に出てみよう」



「っ!?キース様!?」



ベルはてっきりキースも反対するものだと思っており、その言葉に驚いた。



「・・・いいの?・・・」



シャルはベルに反対されて少し落ち込んでいる。



「あぁ、かまわない。

どのみち、明日は勇者も一日動くことはないだろうからな」



目的である勇者の動向だが、王都に帰還早々、キラー・タイガーに襲われる事件があったのだから、勇者も人々同様に休養を取るだろうと思えた。



そのため、明日は時間を持て余すことになる。



「――それに、この辺の地形を知るのにちょうどいい」



グリーン・ボアを狩猟するのが目的ではあるが、それ以外にも目的を作る。



キース達はまだ人間界に来たばかりで、この王都での情報以外はまだ何も知らない。



そこで、時間があるうちに王都の外の情報も手に入れようと考えている。



「かしこまりました、キース様。

そこまで考えが及ばず、申し訳ありません」



ベルはこの狩猟の中にもメリットがあるとは思いつかなかったようで、反対していたことを謝る。



「・・・ご主人様・・・ありがとう・・・」



シャルもまた目的がグリーン・ボアの狩猟だけで、それ以外は考えていなかったようだ。



「――お待たせ!食事ができたわよ。

少し話を聞いたけど、あなた達グリーン・ボアを狩りにいくのかい?

助かるけど、大丈夫なの?」



そんな話をしていると料理が完成したようで、ローナが食事を運んできた。



心配しているのは、誰も狩猟に行きたがらないのに、そんなことをして大丈夫かということだ。



「・・・まかせて・・・たくさん狩ってくる・・・」



シャルは自信満々に答えた。



本当はキラー・タイガーを討伐したのはシャルであり、実力的にキース達は何かに怯える必要が一切ないのだ。



「・・・狩猟に出るなら気を付けていきなさいね」



シャルの自信満々の表情に、ローナは止める理由もなく、そう答えるしかなかった。



「・・・もぐもぐもぐっ・・・」



気付くと一瞬の間に、シャルは出された食事をがっつくように食べているのだった。



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