第12話・魔王様、問題が起こる。
「すまん、ローナさん。明日の屋台の肉だが出荷ができそうにないんだ・・・」
訪問してきたのは、大きな体格をした白いコック衣装の男性だった。
この男性は肉屋を経営しており、屋台で扱っているグリーン・ボアの肉をこのお店から出荷してもらっている。
今回それができないと申し訳なさそうに話す。
「なんだい?何かあったのかい?」
今までそんなことはなかったため、ローナも驚いていた。
「それがな、今日の出来事を知っているだろ?
――キラー・タイガーが現れたってことで、グリーン・ボアの狩猟に出る奴が皆“行かない”って言いだしてしまったんだよ」
ローナが理由を聞くと、すぐに男性が経緯を語ってくれた。
それは今日の出来事である時期外れのキラー・タイガー出現が影響しているようだ。
「なんだいそれ!
――キラー・タイガーは勇者が討伐したんだから、もう平気だろ?」
ローナが言う通り、キラー・タイガーが現れはしたが、すでに勇者が討伐しており何の問題もないように思える。
「俺もそう思うんだが、今回のキラー・タイガーの出現は異例だっただろ?
――それで狩猟連中が皆ビビってしまって“しっかり安全が確保できるまでは行かない”って言うんだよ」
異例の出来事だっただけに、皆怯えてしまっていた。
「・・・困ったわね」
そればっかりは狩猟に出ていないローナには強く言えず、困り果てるしかなかった。
経営者としては店を出せないというのは仕事を切り盛りする上で大きな痛手となる。
短期間ならまだどうにかなるが、先程の言い分だといつ再開されるかはわからない。
「・・・だから、すまん。明日の肉の出荷は無理で、それ以降のことはしっかり話し合ってみるよ」
「・・・わかったわ、わざわざ報告ありがとうね」
しぶしぶではあるがこうなってしまっては諦めて耐えしのぐしかないだろう。
――その後、訪問者が帰ったことでローナが料理を再開する。
考えないといけないことができてしまったためか、少し表情が険しい。
「・・・ローナ・・・明日も串焼き・・・食べれない?・・・」
静かだった食堂だけに話は一部始終聞こえていたが、改めてシャルが話を聞く。
「・・・そうなんだよ、肉が入荷しない限り屋台も開けないよ・・・」
「・・・むぅ・・・」
シャルはそれが不満のようで口を大きく膨らませた。
だけど、「あ!」と何かを思いついたようで、すぐにやめる。
「・・・ローナ・・・グリーン・ボアの肉があれば・・・作ってくれる?・・・」
「え?まぁ、お肉があればすぐできるわよ」
ローナはシャルに何を聞かれているのかイマイチ理解してないものの、ありのままを答えていた。
「・・・ご主人様・・・グリーン・ボア・・・“狩りに行きたい”・・・」
シャルはカウンター席からバッとキース達の方を振り返り、そう宣言した。
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