第11話・魔王様、逸材を召喚する。

「ここよ。――私の宿屋『ゆっくり亭』にようこそ!」



そこは、昼間にキース達がローナと初めて話した屋台のすぐ向かい側。



大きな建物が並ぶ内の1つで、木造建て二階の建物だった。



「これから準備するから、少し待ってて」



ローナがそう言うと、明かりの灯らない宿屋の中に入っていった。



――しばらくすると、宿屋に明かりがつく。



「どうぞ入って!」



すると準備ができたようで、すぐにローナが扉を開けて招き入れてくれた。



宿屋の中は入ってすぐ食堂になっており、たくさんのテーブルや椅子が並んでいる。



ただ、明かりもついていなかったように、ローナとキース達以外誰もいない。



「この時期だと、この街にくる旅人は少ないからまだ開けてなかったのよ」



宿屋を今開けたと思われる行動にローナが理由を話してくれた。



「・・・ごっはん!・・・ごっはん!・・・」



そんな事よりシャルは、食事が待ち遠しいようで、宿屋に着くまでの道中から常にルンルン気分だった。



「――これから食事の準備するから、少しだけ待ってちょうだい。

どこにでも自由に座っていいから、ゆっくりしてて」



そう言ってローナがキッチンの中に入っていくのを見送り、キース達は食堂のテーブルに着くことにした。



シャルは料理を作る様子も気になるようで、1人キッチン前のカウンターへ。



キースとベルはその後ろのテーブルと椅子につき、向かい合って座ることになった。



「――シャル様は本当に変わった使い魔でございますね」



するとベルがキース以外聞こえないような声で話す。



――確かに今のシャルは使い魔という主従関係を越えたように自身の意思で行動している。



だからといって迷惑をしているわけではなく、むしろ人間に溶け込むのに助かっているともいえる。



しかし、その行動は獣人化している幼い姿同様、子供のように思えた。



「・・・シャルはまだシャドー・ウルフの子供だったのかもしれないな」



「っ!・・・まだ子供だとしたら、かなりの逸材ですね」



シャルの持つ魔力量はすでに成長した強い魔物の魔力量を超えている。



それだけでもすごいのに、まだ子供だとしたら成長途中であり、まだまだ強くなっていくということだ。



これから始まる勇者育成に大きく貢献してくれる逸材かもしれない。



――コンコンッ



キース達が話をしながら食事ができるのを待っていると、訪問を知らせる扉をノックする音が聞こえてきた。



「・・・お客さんかしら」



ローナが一旦料理の手を止め、訪問者の対応をすることになった。



「あら、お肉屋さんじゃない!どうしたの?」



尋ねてきたのはローナの知っている人物だったようだ。



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