第8話・魔王様、名前を決める。
――場所は変わり、ここは王都の中央広場。
「ご主人様・・・みてくれた?・・・」
シャドー・ウルフの少女が何かを期待するように聞いてくる。
「あぁ、とても凄かった」
それは勇者をキラー・タイガーから助けたことにある。
キースは少女の見ている映像を共有することで一部始終見ていた。
まさかキラー・タイガーをたった2つの魔法だけで倒すとは思っておらず、素直に言葉で褒める。
「んっ・・・」
だけど、少女にとってはそれだけでは不満のようで、頭を突き出してくる。
「ん?」
キースにはその意味がわからない。
「キース様。頭を撫でてほしいのではないですか?」
すると、ベルが少女のその行動の意味がわかったようで、すかさず知らせてくれる。
「・・・えへへ・・・」
その答えが合っていたようで、そっと頭を撫でると喜んでいた。
今は獣人化して、少女になっているとはいえ、元々は狼。
懐くと触れ合うスキンシップの方が好きなのかもしれない。
――勇者も無事助けられたことで、あとは王都に来るのを待つだけ。
「あ!・・・ご主人様!・・・」
ゆったりと街の風景を眺めていると、何かを思い出したようにシャドー・ウルフの少女が呼ぶ。
「どうした?」
「ご褒美・・・私に名前・・・つけて?・・・」
少女は勇者を助けた褒美として、名前が欲しいと言ってきたのだ。
確かに、元々はシャドー・ウルフだったが今は獣人化して人型になっているのだから、名前が無いと不便になる。
「そうだな。名前を決めようか」
これから使い魔として一緒に生活していくのなら名前が必要になるだろう。
少女もすごく嬉しそうに、「うんうん」と頷いていた。
「どういう名前がいいか・・・」
しかし、名前といっても簡単に決まるようなものではない。
「――キース様がお決めになった名前なら何だろうと喜ぶと思いますよ。
仮に安直な名前だとしても・・・」
キースが悩んでいるとベルがそう言ってフォローしてくれた。
「安直な名前か・・・
わかりやすくシャドー・ウルフだから――『シャル』というのはどうだ?」
ただ名称を縮めただけにも思えるが、それなりに良い名前になったのではないだろうか。
「シャル・・・シャル・・・いい!・・・」
少女ことーー【シャル】も気に入ったようだった。
「良かったですね、シャル様」
ベルにとって魔王の使い魔というのは、魔王同様に敬意を払う存在であるようだ。
――そんなこんなで時間を過ごしていると、街が急に騒がしくなる。
聞けば、勇者が逃がした馬車が、今王都に着いたようだ。
これまでの出来事を街中に知らせたようで、ざわめきが生まれている。
突然のキラー・タイガーの出現。
勇者の安否。
どれをとっても、この街の人々には大きな影響を与えることであった。
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