第7話・魔王様、勇者を助ける。

――場所は変わり、ここは王都周辺の草原地帯。



「はぁ・・・はぁ・・・

どうしてキラー・タイガーがこんな時期に・・・」



1人の少女が一心不乱にキラー・タイガーから逃げている。



その少女はただの女性ではないように、高価な鎧と剣を携えている。



しかし、今は鎧も剣もボロボロの状態。



それもこれも少女を追ってきている虎の魔物――キラー・タイガーにある。



――少し時を遡る。



旅を終え王都に帰還していたところ、森の奥から荒ぶるように現れたキラー・タイガーに襲われた。



元々は安全なルートを数名の乗る馬車で移動していたのだが、突然の襲撃で戦える者が少女しかおらず、仕方なく囮になった。



「私は勇者だから、人を守らないと・・・」と。



少女は初の女勇者である。



しかし、勇者とは言えども、任命されてまだ日が浅く、普通の冒険者となんら変わらない。



1人でキラー・タイガーを相手取るのは難しく、馬車が逃げる時間を稼ぐのが精一杯。



逃げて、隠れては攻撃を防ぐの繰り返しで防戦一方。



次第に防具や武器はボロボロになっていく。



気付くと森を抜け、草原地帯に出ていた。



開けた場所だけに逃げ場も隠れる場所もなくなってしまった。



でも、諦めず一心不乱に逃げて、今に至る。



――「きゃっ!」



逃げる道中、生い茂った草に足をとられ転んでしまった。



キラー・タイガーはすぐ近くまで迫ってきており、無防備な体勢になってしまった勇者に襲い掛かる。



ガオォォォォォッ



「いやぁぁぁぁぁ」



勇者は全てを諦めて、目を閉じただ叫んでいた。



――『シャドー・バインド』



いくら経っても痛みが来ないことに疑問に思い、目を開ける。



すると、勇者の目の前で何かに動きを止められたように立ち止まるキラー・タイガーがいた。



キラー・タイガーの形相は今にも襲い掛からんとする表情で、勇者は思わず後ずさる。



その選択が正しかったようで、キラー・タイガーを拘束している影のようなものが動き出す。



影はキラー・タイガーが立っている地面を覆い隠すように広がっていく。



――『シャドー・ニードル』



その瞬間、影から生えた無数の針のようなものがキラー・タイガーを串刺しにしていく。



ガァァァァァッ・・・



キラー・タイガーもそれには堪らず雄叫びを上げる。



止まない針の猛襲に何もできないまま、倒れるように絶命した。



勇者は助かったことに安堵すると同時に疑問が生まれる。



「一体何が起きたの・・・」と。

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