第6話・魔王様、勇者を見つける。

――現在、使い魔召喚で呼び出されたシャドー・ウルフを使い、勇者の捜索を行なっている。



「まさかシャドー・ウルフにこんな力があるとは・・・」



今、キースとベルは人通りの多い中央広場に戻り、くつろいでいる。



召喚時に発せられた雄叫びで野次馬が集まってきたので、その人の波に乗って広場まできたのだ。



その際、シャドー・ウルフにある変化が起きた。



「もぐもぐっ・・・」



キースとベル――2人が長い椅子に腰かけくつろぐ間で、一心不乱に串焼きにかぶりつく小さな女の子がいる。



真っ黒い長い髪に真っ赤な瞳、まだ幼い顔立ちの少女。



頭の上には大きな三角形の黒い獣耳とお尻付近にはぶわっと膨れた尻尾がある。



「――シャドー・ウルフが獣人化(じゅうじんか)するとは聞いたことがないので、キース様の血の力ではないでしょうか・・・」



ベルの考えでは、使い魔召喚に使用した魔王の血が何かしらの影響を与えたと推測する。



――この少女は先程のシャドー・ウルフであり、騒ぎで身を隠す際に獣人化したのだ。



因みに、シャドー・ウルフの本体である少女はここにいるが、分裂した影のシャドー・ウルフ達が勇者を捜索している。



「ご主人様・・・勇者みつけた・・・」



すると少女が何かに反応したように立ち上がり、報告する。



まだ捜索範囲は広いというのに早くも勇者を発見したらしい。



「でも、勇者・・・危ないかも・・・」



「どういうことだ?」



「強い魔物に・・・追われている・・・」



勇者を見つけたがいいがピンチを迎えているようだ。



キースは使い魔として召喚した利点を利用して、少女の見ている映像を確認する。



「あれは、キラー・タイガーだな。

この辺一帯に生息しているグリーン・ボアが好物で時折現れるらしいが・・・

まだその時期ではないはずだが・・・」



【キラー・タイガー】というのは、黒と白の虎柄模様をした肉食系の虎の魔物。



長くて鋭い二本の牙を持っており、どんな魔物に対しても攻撃的。



気性が荒いため、人間を襲うこともある。



「なぜ勇者はチームを組まず、一人なんだ・・・」



キラー・タイガー一匹なら、チームを組んだ集団なら討伐は可能。



しかし、なぜか今、勇者は1人で戦い苦戦している。



「勇者に会う前に死なせるわけにはいかないな・・・

手を貸してやることはできるか?」



キースは勇者の状況を確認しながら、シャドー・ウルフの少女に言った。



「グリーン・ボアの肉・・・おいしい・・・

キラー・タイガー・・・敵・・・倒す・・・」



少女にとって勇者より、グリーン・ボアの天敵ということが攻撃理由になっている。



屋台で買った10本もあった串焼きを全部1人で食べるほどに気に入ったようだ。

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