第5話・魔王様、使い魔を呼び出す。
――現在、屋台で大量の串焼きを購入した後、街外れの人通りの少ない地区へと訪れていた。
賑わいの多かった街の中央とは違い、こちらは打って変わって静かなもの。
「キース様、どちらに向かわれているのですか?」
何かを探すように辺りを見渡しながら歩くキースの後ろでベルが尋ねる。
「あぁ、そうだな・・・この辺でいいだろう」
着いたのは人が誰もいない、周りには何もない広場だった。
「ここで何をするのですか?」
「勇者の情報も手に入ったことだし、今度は居場所を探知してすぐにわかるように、使い魔(つかいま)を召喚する」
【使い魔】というのは、絶対的な主従関係で成り立つ魔物。
この世界では、使い魔として召喚されたものは、召喚したものと血で繋がり、使い魔が行なったことを全て共有することができる。
キースは生み出した使い魔を勇者の側に潜ませることで探知しやすくする予定なのだ。
「魔法をお使いになるのですね」
使い魔を召喚するには【魔法(まほう)】と呼ばれる力が必要である。
この世界に暮らすものには全て魔法の源である【魔力(まりょく)】が備わっていて、それを使うことで魔法が発動する。
使い魔を召喚するには膨大の魔力と大きな魔法陣を展開する必要がある。
人間にはそれほどまでの魔力はないため、人目につく場所や狭い場所では行なえない。
そのためにこの場所を選んだのだ。
「――では始めよう」
早速キースは魔力を注ぎ、魔法陣を展開する。
それだけでも高度な技術なのに、いともたやすく行なってしまう。
「凄いです、魔王様」
なんの歪みもない綺麗な魔法陣に、ベルは名前呼びを忘れて感心していた。
使い魔を召喚するのは初めてであり、まだこの魔法陣を使用したことがなかったのもある。
「では、探知に優れた使い魔を召喚しよう」
キースが呼び出すもののイメージを強く思い浮かべる。
そして、最後に自らの指をわずかに切り、血を垂らす。
その瞬間、魔法陣が光り輝き、使い魔召喚が発動した。
ワオォォォォォッ
大きな雄叫びと共に召喚されたのは、真っ黒い毛並みと真っ赤な瞳をした一匹の狼だった。
「――これは、シャドー・ウルフでしょうか?」
ベルはそれが何かすぐにわかったようで、そう答えた。
「そうだ。
探知に優れた視覚、聴覚、嗅覚を持ち、なおかつ正体を隠せる力を持つものを探した結果こうなった」
【シャドー・ウルフ】は名前の通り、影を操る狼の魔物。
影を使って攻撃したり、影に姿を変えることができる。
影になることで誰にもばれることなく追跡できるわけだ。
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